シュガートリック




本当に残念そうに口を尖らせた識くんに、ドキドキが収まることはなくて。


「だ、だめだよ……っ!そういうのは好きな人とするものだよ……っ?」

「えーそうなの?じゃあ雪音が俺の事好きになればいいんだよね?」

「…っえ!?ならないよ……っ!」

「そうかなー?でも雪音チャン、俺の言動にドキドキしちゃうんでしょ?」

「それは、慣れてないからだよ……っ」


私が、識くんを好きになる……っ?
なんでそんな意識させるようなこと言うの……?私のこと困らせたいんでしょ……っ!


「雪音のその顔たまんないね。すっごくそそられる」

「〜〜っも、やだぁ……っ」


もうそろそろ限界になってきて。
顔を手で覆って声を絞り出す。

それに、フッと前から笑う声が聞こえてきて。


「ねぇ、雪音?」

「……っ?」


そのまま近づいて、耳元で私に声をかけてくる識くん。
それに、ビクッと反応すると。


「…二度目、奪われないように気をつけてね?」


識くんは、そう余裕そうに微笑んだ。



< 59 / 344 >

この作品をシェア

pagetop