シュガートリック




「…識くんとの噂があるからか、なんか花染さんがいつもより色っぽく見えるんだけど」

「それは気のせいでしょ」

「ほら、目線落としてる感じがたまんなくない??美しい……」


……朝教室に戻ってから、休み時間になる度に私と識くんの噂で溢れかえっていた。

ここまで広まるとは……そんなに重要なことなのかな。

必死に周りの会話が聞こえないようにしてボーっとする。

……いつも通り、下向いてるだけなのに……色っぽいってなに……?
どうすれば色っぽい要素なくせるの……と頭を抱えたくなる。


そう思いながらため息をついたと同時。


「雪音」


ふと、廊下から私の名前を呼ぶ声がして驚いて顔を上げる。

……っ、え、識くん……?

ドアの前で私に手招きをしている識くんに困惑してしまう。
なんで私に……?

そんな私たちの様子に気づいたクラスメイトは、ザワっと騒がしくなって。



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