シュガートリック




「まって、識くんが花染さんに声掛けてる……っ!」

「え、なにごと……っ!?やっぱり噂本当なの……っ?」


周りから聞こえてくる声に、ジワジワと恥ずかしくなってきて。

それを誤魔化すように席を立って識くんの元に駆け寄る。


「えっと……どうしたの?」

「英語の教科書貸してほしくて」

「え…っ、私に……?」


識くんからの言葉に目を見開いてしまう。

私に教科書借りるの……?他にもいっぱいいるのに……?

識くんのことだからこのクラスにも仲良い子とかいるかもしれないのに。
そう疑問に思う。


「いいけど……忘れたの?」

「あー……うん、忘れた」

「……そう?ちょっと待っててね」


気まずそうに返事をした識くんに不思議に思いながらも英語の教科書を取りに行く。

引き出しから取り出して、識くんの所に持っていくと、


「ありがとう雪音」


そう笑顔を向けてくれた。



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