シュガートリック
だから私と目を合わせようとしなかったのか。
私にとっては都合がいいけど……やっぱりさっきのは怖かったな。
緊張でドキドキいっている心臓を落ち着かせる。
「大丈夫?」
「…あ、うん大丈夫……邪魔しちゃったみたいで申し訳ないね……」
「……いや、あいつ俺のこと嫌いだから……」
「え?なんて言った?」
「あ、なんでもないよ」
途中でボソッと言った識くんの言葉が聞き取れなくて聞き返す。
でも笑顔で避けられてしまって。
……なんでもないならいいけど……。
「じゃあ俺戻るね。教科書ありがとう」
「うん、じゃあね」
識くんは私に教科書を見せて笑顔を浮かべて。
それに私も気が抜けて笑って返した。
そのまま席に戻ろうとすると、
「まって……花染さんが笑った」
「…あんな綺麗なことある?」
そんな声が聞こえてきて、ハッとする。