シュガートリック
「今日英語の教科書貸してくれてありがと〜っ!」
「……え?」
「あ……あー、うん。全然いいよ」
その可愛らしい女の子が言った言葉に、驚いて声が出てしまって。
識くんは、一瞬だけ焦ったような表情をして、すぐにいつもの笑顔で手を振っていた。
それに頬を染めて走って去っていく女の子の後ろ姿を見ながら呆然とする。
……あれ、でも識くん英語の教科書忘れたんじゃ……?
もしかして……。
「あー……俺、自分の教科書あの子に貸しちゃって。でも俺も同じ時間に英語あることに気づいて……雪音に借りた」
「…あ、」
「ごめん雪音」
気まずそうに私に言った識くんに、なるほどと納得する。
確かにあの時の識くん『あー……うん、忘れた』って言葉に詰まってたよね。
謝ってきた識くんに、少し不思議に思って。
「え、なんで謝るの?」
「迷惑かけたかなって」
「え?」