シュガートリック
そうだ、識くんが目の前にいること忘れそうになってた……。
落ち込んでいることを悟られないように、パッと顔を上げて笑顔を浮かべる。
私をじっと見た識くんの手が、急に私に近づいてきて。
その手は、ポンっと私の頭の上に優しく乗せられた。
「……っ、え」
「俺、早く雪音と二人になりたいな」
「……っ!?」
「だから早く帰ろう?ね?」
いつもよりも大きく、周りに聞こえるような音量。
甘えたような可愛い声。
……それにこの笑顔はいつも女の子達と話す時と同じ、演技するかのような表情。
もしかして……わざと聞こえるように……?
「きゃーっ!まって、今の識くんもあざとすぎじゃない!?可愛い!!」
「やばいやばい、さすがは識くんだわ……」
「私も言われたい……惚れる……」
するとすぐに、周りの女の子がそれに反応して。