シュガートリック
私についての話ではなく、識くんについての話に一瞬にして変わった。
パッと識くんを見つめると、『もう大丈夫だよ』とでもいうような笑顔が返ってくる。
それにドキッとして、胸がジーンと締め付けられた。
識くんもまた噂が広まっちゃうかもしれないのに……私のために周りの子の気を逸らしてくれたの……?
「行こっか」
「…っ、うん」
私の頭から手を離してそう言った識くんに頷く。
そのまま歩き出した識くんに私もついて行った。
学校を出るまでの間、女の子から声がかかって笑顔で手を振るの繰り返し。
それにも関わらず、その間も私に話を振ってくれる。
「識ーっ!またねー」
「うん、バイバイ」
笑顔で答える識くんを横目で見ながら、そのまま門を出て二人で歩く。
「……ねぇ識くん」
「なーに?」
「さっきは、ありがとう」