シュガートリック

さっき周りの気を逸らしてくれたことについてお礼を言うと、識くんは目をパチパチとさせて。


「……雪音は素が一番可愛いんだから、気にしなくていいんだよ」

「…っ」

「俺の前でだけは、素でいてほしい」


当たり前のように私に言った識くんにギュッと胸が苦しくなる。

……確かに、さっき識くんに駆け寄ったことも顔を髪で隠す仕草をしたことも、全部無意識だった。

そんな私の素を見たいと言ってくれる識くんに嬉しい気持ちでいっぱいになって。


「……うん、俺雪音のその顔が好きだよ」

「…え？」

「自然な笑顔が好き」

「……っ！」

「……あと、泣き顔も好きだよ」

「…っ、え？」


サラッと言われた"好き"にドキッとするが、識くんの言っていることは表情のことだから……っ！と変に意識しないようにする。

でもその後に聞こえてきた言葉に、動揺してしまって。