シュガートリック
な、泣き顔……っ?
泣き顔なんて前に一度しか見せてないよ……っ!
いつも顔赤くなったら涙目になるねって言われるけど……それはノーカンだとして。
泣き顔が好きって発言はどうなの……っ!!
顔が真っ赤になりながらも焦る私に、ハハッと笑った識くん。
その笑顔は、やっぱり感情の籠った本物で……。
「識くんは……なんで特定の人は作らないの?」
気づけば、そんな疑問が口からこぼれていた。
ハッとした時にはもう遅くて。
識くんの声が聞こえなくなって顔を上げると、何考えているのかわからない、感情のない瞳をしていた。
見たこともないその表情に少しゾクッとする。
「……っえっと、」
「恋だとか愛だとか、そんなもの必要なくない?」
話を変えようとすると、識くんが口を開いて。
ニコッと笑ってそう言ったその表情は、目が冷たく笑っていなかった。