Good day ! 3
「えーっと、恵真。何か足りない物はない?」

病室で身の回りの整理をしながら、大和が聞く。

「大丈夫です」
「そう?もし何か忘れ物あったら、あとで連絡してね。明日持って来るから」
「はい」

そうこうしているうちに、病室に夕食が運ばれてきた。

「わあ、美味しそう!」
「恵真、しっかり食べてね。夜9時以降は絶食で、次に食べられるのは明後日になるみたいだから」

大和が入院スケジュールを見ながら、恵真に話す。

「そうなんですね。じゃあ味わって頂きます。大和さん、夕食は?」
「ん?俺は帰ってから適当に済ませるよ」
「すみません。冷蔵庫に常備菜と、煮物も少し残ってるので、良かったら食べてください」
「ありがとう。俺のことなんて、気にしなくていいから」

そう言って、大和は恵真が食べるのを優しく見守る。

「恵真。退院したら何食べたい?好きな物たくさん用意しておくよ」
「え、ほんとに?」
「ああ。妊娠中、色々食べたい物我慢してきただろ?退院したら、好きなだけ食べたらいいよ」
「うーん、それがそういう訳にもいかないんですよね」

え、どうして?と大和は意外そうに聞く。

「母乳の為にカフェインも控えないといけないし、甘い物もまだ…。引き続き野菜中心の食事にしないとダメみたいです」
「そうなんだ。恵真、大好きなデザートもずっと我慢してたのに、まだ食べられないのか」

大和は残念そうにうつむく。

「こういう時、男って何も出来ないんだな。恵真にばかり色々我慢させて、ごめんな」

ううん、と恵真は明るく笑う。

「我慢だなんて、思ってません。大好きな大和さんとの赤ちゃんを授かって、とっても嬉しかったです。最初は心配でたまらなかったけど、胎動を感じられるようになってからは、毎日が幸せで。無事に臨月まで育てられてホッとしています。明日、いよいよ会えますね。とっても楽しみ!」
「恵真…」

ふふっと笑う恵真を、大和は優しく抱きしめる。

「ありがとう、恵真。いつもこんなにも俺を幸せにしてくれて」
「私の方こそ。大和さん、いつも守ってくれてありがとうございます」

二人で微笑み合う。

「恵真。明日、一緒に赤ちゃんを迎えよう」
「はい」
「そして必ず俺が幸せにする。恵真も、赤ちゃんも」
「私も、必ず幸せにします。大和さんも、赤ちゃんも」

大和は頷くと、恵真に優しく口づける。

これまでの感謝と、これからの幸せを約束して…。

二人は、この先もずっと続く明るい未来を感じながら、いつまでも抱き合っていた。
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