Good day ! 3
「ごめんね。私、自分の出産で頭がいっぱいで。11月11日だったよね?入籍。遅くなったけど、おめでとう!改めてお祝い贈らせてね」
「ありがとう!恵真、大変な毎日だもんね。落ち着いてから話そうって、伊沢とも言ってたんだ」
「そんな、気を遣わなくて良かったのに。とにかくおめでとう!もう本当に私も嬉しい!」

興奮気味に話していた恵真は、ん?と途中で首をひねる。

「どうかした?恵真」
「あ、その。こずえちゃん、伊沢くんのこと何て呼んでるの?」
「へ?伊沢のこと?そのまんまだよ。伊沢って」
「ええー?結婚したのに?」
「だって、紙切れ一枚出したからって、何かが劇的に変わる訳じゃないでしょ?」
「紙切れって…。いや、結婚したんだもん。こずえちゃんだって、伊沢 こずえになったんでしょう?」
「あはは!そうか。でもまあ、伊沢はあだ名みたいなもんだからね」

いやいや、と恵真は手を振る。

「伊沢くんだって、きっと名字じゃなくて下の名前で呼んで欲しいと思ってるよ、きっと」
「そうかな?ね、そう言えば、伊沢の下の名前、知ってる?」
「あ、えーっと。何だったかな?確か…」
「でしょー?私も忘れてたの。それで聞いちゃった。あんた、下の名前何だったっけ?って」

ええー?!と、これまた恵真は仰け反って驚く。

「こ、こずえちゃん、そんな聞き方…」
「それでね、何だったと思う?優太(ゆうた)よ、優太。もう、そのまんまじゃない?」
「そ、そうか。そうだったね。伊沢くん、確か優太って名前だったね」
「そうなのよー。いかにもって感じよね」
「それなら名前で呼んであげなよ。喜ぶよ?きっと」
「ええー?今更そんな…」

こずえはうつむいて小声になる。

「あれ?こずえちゃん、もしかして照れてるの?」
「ちょ、恵真!」
「あ、そうなんだ!こずえちゃんたら、可愛い!うふふ」
「もう!からかわないでよね」
「そっかあ。じゃあ、もうすぐクリスマスでしょ?プレゼント渡してロマンチックな雰囲気になったら、名前を呼んであげなよ。伊沢くん、もう感激してドキュンだよ」
「ドキュン?恵真、そんな言葉どこで使うのよ」
「いいから、ね?絶対ドキュンだって」
「だから、何なのよ?そのドキュンって」
「呼んでみたら分かるから、ね?」

もう、何なのよーと、眉間にシワを寄せるこずえに、恵真はまた笑いかけた。
< 135 / 182 >

この作品をシェア

pagetop