Good day ! 3
翌朝、受付の開始時間に合わせて、二人はクリニックに来ていた。

初診で予約がない為、1時間以上待ってようやく名前を呼ばれる。

ご主人もご一緒にどうぞ、と言われて、二人で診察室に入った。

「初めまして。医師の萩原(はぎわら)です。えっと、市販の検査薬で陽性だったんですね。では早速内診してみましょう。ご主人はこのままお待ち頂けますか?」

優しそうな女性の先生に促されて、恵真だけ隣の部屋に移動する。

ドキドキしながら超音波検査を受け、再び大和の待つ診察室に戻ると、先生は1枚のエコー写真を見せながらにっこり笑う。

「おめでとうございます。妊娠されてますね」

わあ…と、恵真は嬉しさに顔をほころばせて、口元に手をやる。

大和も微笑んで、恵真の肩を抱き寄せた。

「今は4週6日目です。出産予定日は11月の22日ですね。あら、語呂がいいわね」

えっ!と二人は驚きの声を上げる。

(11月22日って、私達が婚約した日?凄い偶然)

二人で顔を見合わせていると、更に先生は話を続けた。

「この写真のここ。ほら、黒くて丸いのが写ってるでしょう?これが胎嚢といって、赤ちゃんのお部屋です。これが一つ目で、こっちが二つ目」

うんうんと頷きながら話を聞いていた二人は、ん?と首をひねる。

「二つ…ですか?」
「そう。つまり双子ちゃんね」

えええー?!と、恵真と大和は仰け反って驚く。

「ふ、ふ、双子?!つまり、赤ちゃんは二人?」
「そうよ。ダブルでおめでたいわね」

ふふっと笑ってから、でも…と先生は表情を変える。

「脅かす訳ではないけれど、決して手放しでは喜べないの。まだ赤ちゃんの心拍も確認出来ていないし、まずは来週また確認してみないとね。その後も、双子ちゃんは何かとリスクが高くなります。妊娠中の安定期はないと思っていてください」

恵真は真剣な顔で頷く。
すると大和が口を開いた。

「あの、私に出来る事はありますか?妻にはなるべく安静にしてもらい、家事なども自分がやります。それ以外に何か出来る事はあるでしょうか?」
「まあ、優しい旦那様ね。もう充分、分かっていらっしゃるわ。でもあと一つだけ」
「はい、何でしょう?」
「奥様を、毎日楽しい気分にさせてあげてください。きっとお二人は、とても真面目に慎重に赤ちゃんを守っていかれるのだとお見受けしました。でも、神経質になり過ぎるとストレスになりますからね。どうか毎日、ゆったりと穏やかに過ごしてくださいね」
「はい」

二人でしっかりと頷く。

ではまた来週!と、にこやかに見送られて、恵真と大和は診察室をあとにした。
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