Good day ! 3
第二十章 膨らむ夢、広がる幸せ
「お子様の、フライトデビュー、ですか?」

恵真が乗務に復帰してから、1ヶ月が経った頃。
大和と恵真は、部長と川原に会議室に呼ばれていた。

「そう。藤崎さんが産休に入る前に、SNSのコメントでお客様が提案されてたの、覚えてる?」
「えっと、確かお子様イベントの時の記事でしたよね?」

大和が子ども達に操縦をレクチャーしたイベントの様子を、SNSにアップすると、たくさんのコメントが寄せられた。

その時に、夫婦パイロットの機長だ!から始まり、次はフルムーンフライトや、子どものフライトデビューも企画して欲しい、とコメントが付いていた。

「その案を上層部に伝えたら、是非やろうって事になってたの。もちろん今回も、パイロットは佐倉夫妻でね」
「だから藤崎くんの復帰を、上層部も首を長くして待っていたんだよ」

恵真は驚いて身を縮こませる。

「そ、そうだったんですか」

それで双子が1歳になった時に、部長は大和に恵真の復帰を聞いてきたのだろう。

そこから更に2年近く待たせてしまった事に、恵真は申し訳なさを感じた。

「どうだろう、引き受けてくれるかね?」
「え、あ、はい。もちろんです」

恵真が頷くと、大和も続いた。

「良かった!早速、大々的に告知するよ。日程は12月15日。行き先は前回と同じくホノルルだ。ご搭乗の特典として、お子様向けの飛行機のグッズをプレゼント。機内食も特製のお子様ランチ。そしてこれまた前回同様、搭乗証明書を発行する。もちろん、君達のサイン入りのな」

あ、は、はい…と、恵真は大和と苦笑いする。

「いやー、遂に始動するな。良かった良かった。川原くん、早速進めてくれ。頼んだよ」
「かしこまりました。佐倉さん、藤崎さん、告知に合わせて、お二人のインタビューもSNSに載せたいと思っています。お願い出来ますか?」
「あ、はい。分かりました」

大和は頷いたあと、少し何かを考え込む。
やがて顔を上げると、
「部長、早速そのフライトのチケットを買いたいのですが」と、部屋を出ようとしていた部長を呼び止めた。
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