Good day ! 3
「おかあさん、おようふく、これでいい?」

夕飯の支度をしながら、恵真は舞に呼ばれて振り返る。

舞はモコモコのお気に入りのトレーナーを、リュックに入れようとしていた。

「ふふ、舞。ハワイは暑いの。だから半袖のTシャツでいいのよ」

ええー?!と、舞も翼も驚く。

「どうして?おそとはさむいよ?」
「はんそで、かぜひいちゃうよ?」

恵真はガスコンロを止めてから、舞と翼に世界地図を広げて見せる。

「あのね、日本は今、冬で寒いけど、他の国は季節が違うの。例えばここ、オーストラリアは今は夏なのよ」

ええー?!と、これまた二人は目を丸くする。

「そして、ここがハワイ。今度みんなで行くところね。ここは、1年中暖かくて過ごしやすいの」
「ふうん。ポカポカしてるの?」
「そうよ。海もすぐ近くにあるの」
「うみ?やった!」
「およげる?」
「んー、そうね。お天気良ければ波打ち際で遊びましょうか」

わーい!と二人はバンザイして喜ぶ。
その時、ただいまーと玄関から大和の声がした。

「おとうさんだ!」

二人は玄関に走って行き大和に飛びつく。

「おとうさん!おかえりなさい」
「あのね、ハワイ、うみがあるの」
「おとうさんもおよぐ?」

あはは!と笑いながら、大和は二人の手を繋いでリビングに入る。

「お帰りなさい、大和さん」
「ただいま、恵真」

恵真の頬に口づけると、大和は翼と舞が広げた荷物に気づく。

「おっ、二人ともハワイに行く準備してたの?」
「うん!ハワイはポカポカだって」
「そうだよー。少し雨がサーッて降ったあとに、虹もきれいに見えるんだよ」

にじー?!と二人は声を揃える。

「みたい!ね、おにいちゃん」
「うん!みたい」
「見えるといいな」

夕飯を食べながら、四人でハワイの話をする。

「飛行機の中は、おじいちゃんとおばあちゃんが一緒にいるからね」
「おとうさんとおかあさんは?」
「お父さんとお母さんは、コックピットっていう飛行機の一番前の部屋にいるよ。飛行機を安全に優しく飛ばすから、二人とも安心して空の旅を楽しんでね。窓からきれいな景色も見えるよ」

わー!と、翼も舞も目を輝かせる。

「そらのうえ?くもよりうえ?」
「ああ、そうだ。雲より上だよ。雲の中を通り抜けるんだ」
「え、ぶつからないの?」
「あはは!雲はふわふわだから、大丈夫だよ。綿あめみたいなんだ」

綿あめ…と、二人はうっとりする。

「あ、綿あめみたいだけど、食べられないからな?」

真面目に補足する大和に、恵真はふふっと笑う。

「翼、舞、夜明けも見えるわよ。太陽が空に昇るの」

わあ…と二人はまた目を輝かせる。

「たのしみ!まい、たくさんみよう」
「うん!たのしみ」

そんな二人に、恵真も大和と笑顔で頷いた。
< 166 / 182 >

この作品をシェア

pagetop