Good day ! 3
5月に入り、もうすぐやって来る大和の誕生日プレゼントを何にしようかと、恵真は一人ソファで考え込んでいた。

「うーん…何がいいだろう?実際に見て探したいけど、今年は諦めてネットで買おうかな」

スマートフォンを片手にあれこれ検索していると、電話がかかってきた。

「あ、こずえちゃんだ!」

嬉しくなり、すぐに電話に出る。

「もしもし、こずえちゃん?」
「もしもーし、恵真?元気にしてる?」
「うん、元気だよ」
「そっか、良かった。伊沢が最近恵真に会ってないって言うから、何かあったのかと思っちゃった。ねえ、誕生日のプレゼントも渡したいから、ランチでも行こうよ」

あ…、と恵真は考えを巡らせる。

こずえには、まだ妊娠した事を話していない。
それにランチに出かけるのも、ずっと控えてきた。

(そろそろいいかな?)

とりあえず、こずえには妊娠を知らせておくことにする。

「こずえちゃん。あのね、実は私、妊娠してるの」
「ええー?!妊娠?!」

大きな声でこずえが驚いたあと、やまびこのように「ええー?!妊娠?!」と遠くから声が聞こえてきた。

「ん?もしかして、伊沢くんもいるの?」
「あ、そうなの。あいつ、私のマンションに入り浸っちゃって。ごめんね、もしかして伊沢にはまだ言わないつもりだった?」
「ううん。伊沢くんにもこずえちゃんと一緒に伝えたかったから、ちょうど良かった」
「そっか。とにかくおめでとう!今、何ヶ月なの?」
「まだ3ヶ月なの。本当なら安定期に入ってからお知らせするものなんだろうけど、パイロットだからそうもいかなくて」

ああ、そうだよね、とこずえは声のトーンを落とす。

「じゃあ今、飛んでないってこと?」
「うん、そう」
「そうだよね。あれ?でも、安定期になると飛べるんじゃなかったっけ?」
「うん。でも私は飛ぶつもりはないの。それにどのみち、お医者様の許可も下りないし」
「え?どうして?」
「あのね、私、双子を妊娠してるの」

「ええー?!双子?!」というこずえの声は、またしてもやまびことなり、「ええー?!双子?!」と伊沢の声がした。

「す、凄いね!恵真。ダブルおめでただね!」
「ありがとう!双子妊娠は安定期もないらしくて、毎日ドキドキなんだけどね」
「そっか。じゃあ気軽にランチとか行けないか。でも、恵真のマンションの近くにカフェあるでしょ?あそこで少しお茶するくらいは平気かな?」
「あ、うん。歩いて5分だもんね。大丈夫だよ」
「それなら、明日そこで会わない?あ、もちろん体調次第でドタキャンもOKよ」
「ありがとう!分かった。楽しみにしてるね」

恵真は久しぶりにこずえとおしゃべり出来る嬉しさに、ワクワクして電話を切った。
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