Good day ! 3
「パイロットは、たくさんのお客様の命を預かって空を飛びます。例えばこれがテレビゲームなら、失敗してもリセットして1からやり直せますが、パイロットはそうはいきません。お客様の大切な命は、みんな1つだけだからです。なのでパイロットは何度も訓練をして、日々勉強を重ねています」

さっきまではしゃいでいたのが嘘のように、男の子達はシンと静まり返っている。

どの子の目も、真剣そのものだった。

「それでは皆さんも、実際にこの席に座って操縦をしてみましょう。この黒いハンドルのようなものは、操縦桿と言います。こんなふうに両手でしっかりと握ってください。そして、上に行きたい時は、この操縦桿を手前に引きます」

大和は実際に操縦桿を手前に引いてみせる。

「下に下りたい時は、向こう側に押します。右に行きたい時は右に、左に行きたい時は左に倒します」

男の子達は、手で真似をしながら聞いている。

「では順番に座ってやってみましょう」

川原が男の子達を並ばせて、最初の子が大和と入れ違いに機長席に座った。

「まずは操縦桿を両手で握ります。そして、飛行機を離陸させましょう。操縦桿を手前に引いてください。そうです」

席に座った男の子は、真剣に大和の声に合わせて操縦桿を動かす。

「では右に行ってみましょう。そうですね。反対に左へ。上手です。最後に着陸します。操縦桿を向こう側に押してください」

男の子が操縦桿を前に倒すと、大和は笑顔で拍手した。

「ナイスランディング!」

保護者からも拍手が起こり、男の子は誇らしげに振り返って満面の笑みを浮かべた。
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