例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
田舎のドライブは、いつか走った都会の中を駆け抜けるそれとは全く違った。
何しろ、車のヘッドライトが照らす道が暗過ぎる。
二人の乗るベンツしか光源がない。
「坂月さん、あの、これはどこを走っているのか、分かってるんですかね?」
急に心配になって、そう訊ねるが。
「さぁ、どうでしょうね。何しろ初めて来た場所ですからね。」
坂月はとぼけた返事をする。
「ところで、秋元さんは、一体何をお困りなのでしょう?私で良ければ、力になりますが。」
『俺』から『私』に変わった坂月は、仕事モードだ。
――今のこの状況に困ってるんだけど。
沙耶は、こっそり溜め息を吐いてから、とりあえず、心に引っかかっている二つの事の内、ひとつを話してみることにした。
「未だに信じられない話ですけど……秋元家の財産が、私のものになったんです。それは、坂月さん、知ってますよね?」
「勿論です。」
「で、一応小さいとはいえ、会社を経営していたのですけど……その経営をどうすればいいのか、私には全くわからなくってですね……素人ですから。」
「あぁ、成る程、確かにそうですよね、うん。秋元の所有していた会社は経営陣不在の状態で、滅茶苦茶になってますからね。」
「!!?」
さらりと零されたすごい情報に、沙耶は驚いて、坂月の横顔を、凝視した。