例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「かといって、素人の秋元さんがそこに入って行ったら、火に油を注ぐ事になるでしょうね。」


運転している坂月は、勿論前を向いている。


「……ですよね。やっぱり……」


沙耶は肩を落とした。
外の風景は、暗闇とライトに照らされる葉っぱのみ。
それが、今の自分の状況に重なる。

秋元家を手にした所で、自分には何の力もない。
ましてや、会社を運営するなんて考えが、頭を過った事すらない。

更に、秋元家は秋元家で、彼等のやり方で守って来たものがある訳で、それに守られていた従業員が在るのだ。今回のことで起きる反発は、予想よりはるかに大きいだろう。




「そこで、ひとつ提案なのですが」



信号機もないのに、車が停止して、坂月が助手席の沙耶を見た。



「戻って来ませんか。こっちに。」

< 13 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop