例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「私のお父さんは、そういう事に携わってなかったと思う。会社経営とか、権力争いとか、そういうの、苦手だったみたい。完全に裏方っていうか。」
沙耶の記憶に残っているのは、秋元家に場違いな程、笑顔の父ばかりだ。
「でも、確かに色黒の男が、先代に恩義があるような事言ってたわよ。良い所は多少なりともあったんじゃない?」
「…………どうかな。」
石垣がそう呟き、考え込むような仕草を見せた所で、沙耶ははたと思い出す。
「……ていうか、最初から梟王の事あんた知ってたのよね?」
ジロっと睨むと、石垣はニヤッと笑って舌を出した。
「でも、こっちでなんとかする予定だったんだ。こんなに早く接触を持ってくるとは思わなかった。ま、災難だったな。スーツ、よく似合ってんよ、社長。」
ケラケラと声を立てて笑い始めた石垣に、沙耶は苛々が募る。
「~~~バカにしてるでしょ!私がどれだけ今回の事で……」
沙耶にとって、鉛のようなこの大きな問題は、石垣にとっては、些細なことのようで。
それなのに、沙耶は泣いて。
穴があったら入りたい。
時間を巻き戻して、あんな自分消し去ってしまいたい。
「もう!最低!」
悔しさや恥ずかしさから、振り上げた手を振り下ろそうとするも。
「どっちが。」
それすら、簡単に捕まってしまう。