例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「……何が不服なんだよ。」
力はそのままに、石垣が訊ねる。
「何がって……言ったでしょ、突然過ぎ。け…け、結婚なんて。」
言葉に出すのも憚られ、またしても、沙耶の顔がかっと赤くなる。石垣に見られなくて良かったと思うが、もしかしたら熱は伝わってしまっているのでは、と心配になる。
「俺の中じゃ、必然的な感じだったんだけど……てかまんざらでもなかっただろ?あの雰囲気でまさか逃げる奴が居るとは思わないじゃねーか。」
と。
空気が少し変わり、雲行きが怪しくなってきた。
「ちがっ……!あんただって最初は、もう行くから、なんて言ってたでしょ!」
沙耶がバタバタ暴れ出すが、石垣はピクリとも動かない。
「あれは俺なりに決心してたんだよ!お前は振り向かなかったんだから、普通無理だと思うだろ。約束はなかったことにされたんだって。なのに、ぼたぼた泣きながらコートくいって可愛く引っ張られたら、そーゆーことかと思うだろ。」
「そっ、そんなことしてない!」
「した。」
益々足掻いてみるが、石垣の身体は、鉄壁で、沙耶はなんとなく劣勢。