例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても

ーーしまった。

そう思っても、一度口から出てしまったコトバを戻す方法は、何もない。

沙耶は、石垣の目の色が変わったのを、見て取った。


「どういうことだ?」


追及は免れない。
険しくなった石垣の視線は、沙耶の内奥を全て見透かそうとしているようだ。


「……えっと……」


薄暗くなって来た辺り。

このままいっそ、闇に紛れて全てなかったことになってくれたら良いのにと、沙耶は願うが、現実はそうならない。

やってしまった過ちは、どこに逃げ隠れようとも、必ず己に代価を求めてやってくる。


特に今回のようなケースは、完全に失言、といえる。どこぞの政治家のように、言っておりませんと突っぱねる事も出来ないし、認めて謝罪で済むような流れではない。

真実を言うか言わないか、だ。



「実は……あの……」


沙耶の脳裏に坂月の笑顔がチラつく。

沙耶が石垣にきちんと返事が出来ないのは、坂月の事が引っ掛かっているから。それは自覚している。


「昔……坂月さんにも会ってるの。」


それでもやはり、口にすべきではなかった。

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