例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても

「頼ったのか?楓を。俺よりも。」


石垣の言葉に、沙耶はハッとした。


「そうじゃない、、、そうじゃなくて………」



事実を伝えたくとも、なんとも全てが上手い具合にこんがらがっていて、どう言えば正解なのか、どう言えば、石垣に伝わるのか、分からない。

必死な思いが、勝手に手を動かして、石垣の腕を掴んだが。

「ごめん………俺、お前がよく分からない。」



小さく振り払われ、彼が放った言葉は、沙耶の胸に突き刺さる。

「……帰るわ。今日は鍵、締め忘れんなよ。」



軽く振り払われた、手が、どうしてか痛む。
全然どこにもぶつかっていないのに、ヒリヒリする。

遠退いていく足音が、小さくなって消えた。


「今日、は………って………」


今更気付く。

昨日沙耶が鍵を締め忘れてから、彼はここで自分を待っていてくれたんだということを。もしかしたら戻ってくるかもしれないと、待っていてくれたんだと。

返事を持って、帰ってくるかもしれないと、ずっと今迄。
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