例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても

「沙耶………?」


父のように優しく。穏やかで。
母のように慎ましく、愛情深くありたい。


「二人はいつも穏やかだったのに……」


いつでも不変な、二人の柔らかい空気は。
時折、疎ましくなるくらいで。
沙耶に、怪我も、切られた前髪も、盗られた靴も、隠させた。
この空気を、壊しちゃいけないと、思わせた。

これを守るのは、自分の務めだと感じる程に、それは愛しくて、心地よい空間だった。

「でも……」

だから、いつだって。

「優しいだけじゃ、大事なモノは、守れないでしょ?」

こんな自分を正当化してきた。


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