例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても



「何が……あったのか、わからないけど……」


沙苗は身を起こして、小さくなっている沙耶を見つめる。

「沙耶は、優しさは弱さだと、言いたいの?」

沙耶の目が見開かれるが、沙苗と顔を合わすことは出来ない。
指摘されたことが、図星だったからだ。

母の声は、いつもと変わらない。
けれど、何かを含んでいる。

「沙耶にとって、私達は、弱い存在だった?」

「沙ーー「そうだよ」」

暫く答えなかった沙耶が、突然顔を上げた。


ーーダメだって。

良心が、止めようとするのに。

「お父さんもお母さんも優し過ぎて周りのことなんて何も、見てなかった。だから私は助けても言えなかった!」

言っちゃダメだって。
これ以上傷付けてはいけないって。
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