例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「——ごめんね。沙耶には、いつも、辛い思いばっかりさせてきたよね。」
少しの沈黙の後、病室に響く、やはりいつも通りの、優しい沙苗の声。
謝ってもらいたい訳ではない沙耶は、何処か痛むような顔をしながら、力なく首を振った。違う、と。
「私は、確かに弱いのよ。身体がこんな風で、沙耶や駿には迷惑ばっかりいつもかけてる。駄目な母親よね。」
淡々と語る母の言葉はまっすぐで、厭味も悲観も含まれていない。
けれど、それにも、沙耶は首を振った。そうじゃないの、と。
「沙耶は、強いから、どこか甘えている部分が、昔からずっとあったのよね――」
沙苗はそこまで言うと、にっこりと微笑んだ。
「貴女のその強さは、父親譲りなのよ。」
誇らしげに、背筋をしゃんと伸ばして、沙苗はそう言った。