例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
気付いたら、玄関の目の前だった。
鍵穴に鍵を差し込もうとして、開いてることに気づき、沙耶はそのままノブを回す。
ドアを開けると、辺りを漂っていた味噌汁の匂いが強くなって、ああ、うちからだったのかと思い、驚く。
「あーーー!姉ちゃんやっと帰ってきたーーー!」
飛んできた駿の元気な声に、落ちていた気持ちが少しだけ浮上する。
「ごめんごめん!遅くなって。病院行き違いだったみたいだね。」
慌てて上がると、駿がワイシャツにエプロン姿で台所に立っていた。コンロの上の鍋からは美味しそうな湯気が立ち上る。
「そうだよ。姉ちゃん全然来ないからさ、何かあったのかと思ったんだけど、わかんないしさーーーー」
そこまで言った所で駿は姉の顔を見て一瞬黙り。
「なんか、あった?」
やや真剣な口調で訊ねた。