例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
一瞬沈黙した後。
「それで?梟王がどうかしたの?」
駿が訊ねる。
「あ、えー……す、すっごく高かった!」
「………え?何が?」
「い、色々な……か、鞄とか!」
よく分からない自分の発言に、弟が怪訝な顔をしているのを、姉は痛いほど自覚しているが。
この窮地で、ぐるるるるるるるる、と鳴る腹の虫。
「……とりあえず手洗ってきなよ。夕飯にしよう。」
エプロン姿の駿が、ニヤッと笑ってまたガス台に向かったのを横目に、沙耶はこっそり安堵していた。
ーー危なかった。言わなくて良かった。
かつて父の働いていた職場の幹部と揉めているどころか、全く良く思われていないなんて知ったら、駿はがっかりしてしまうだろう。