忘れられない夏がすぐそこに。
パチパチと小さな火花があちこちに散る。
・・・・・・綺麗。
線香花火は一人3本ずつ。
お互い黙ったまま線香花火を見つめていた。
肩に触れそうなくらい近くてドキドキしてるけど、話さなくても一緒にいれるこの時間がなんだか心地よくて・・・
ずっとこの時間が続けば良いのに・・・なんて思った。
最後の1本の線香花火はほぼ同時に終わった。
「実里」
名前を呼ばれて顔を向けると、
「っ、」
柔らかいものが唇にぶつかった。
ザザーンと波の音。
ドキドキと加速する胸の鼓動。
ゆっくりと離れた光希くんの目は、満月に照らされて吸い込まれそうなくらい綺麗で、少し、揺れていた。
「・・・・・・一目惚れだと思う」
「え・・・」
「・・・最初、自転車に乗った実里を見た時、普通にタイプだと思った。・・・・・・店に行ったら実里がいて、正直テンパった。話したいって思ったし、このまま帰りたくねぇなと思って無理矢理居座ったし。・・・・・・自分でも自分に驚いてる。毎日、実里に会いたくなって、会ったらどんどん惹かれていくし。明日が来るのがどんどん嫌になった」
目線を少し下げて続ける光希くん。