魔法の使えない不良品伯爵令嬢、魔導公爵に溺愛される2
公爵夫人として
ディアナに手紙を送って、二日が経った。今日も教会に礼拝に来ているレティシアだが、相変わらず正門の前にはメルヴィーが居た。
「レティシア様! 今日という今日はお聞かせくださいな!」
日除けの傘を差し、声高らかに扇子を向けてくるメルヴィーに、レティシアは「ごめんなさい」とお辞儀をした。それに腹を立てるメルヴィーだが、やけくそと言わんばかりに言葉を発した。
「もうっ! こうなったら、今日から私とあなたはライバルですわ!!」
「えっ」
突然の発言に驚くレティシア。ライバル……競争相手、好敵手という意味の言葉だ。友達とはいかなくても、特別な響きがある。レティシアは少しだけ嬉しくなった。だが、レティシアの背後にいるカイラが手を上げながら一言物申した。
「メルヴィー様、発言をしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんわ」
そう答えられ、カイラはにこやかに言葉を発した。
「お嬢様は既にご結婚なさっているので、ライバルもくそもないと思います」
その言葉に、メルヴィーもレティシアも、衝撃を受けた表情を浮かべた。
「そそそそ、そんなのどうでもいいのですわ! 兎に角、今日から私達はライバルです! いいですわね!」
「は、はいっ」
思わず頷いてしまったレティシアに、メルヴィーは笑顔を向けた。
「では、今日の所はここで失礼させていただきますわ」
「あ、メルヴィー様」
「なんですの?」
振り返るメルヴィーに、レティシアは言葉をかけた。
「礼拝はもうお済だったのですか?」
その問いに、メルヴィーは「ええ」と答えた。となると、メルヴィーはわざわざレティシアを待っていたことになる。それが嬉しくて、レティシアは微笑んだ。
「ありがとうございます。待っていてくださって」
「べっ、別にあなたを待っていたわけではありませんわ! そこははき違えないように!」
そう言い残し、メルヴィーは去って行った。
「いいんですか? お嬢様のことを勝手にライバルだなんて認識させちゃって」
不服そうなカイラの発言に、レティシアは微笑んだ。
「いいのよ。寧ろ嬉しいわ。私なんかにライバルだなんて言ってくださるんだもの」
それを聞き、カイラもアティカも、やれやれと肩を落とした。
屋敷に戻ると、使用人が駆け寄ってきた。
「奥様、ディアナ様がいらっしゃっております」
「お義姉様が?」
いったい、どうしたというのだろうか――。
「現在、客間にて対応しております」
「ありがとう、行ってみるわ」
使用人にそう言い残し、レティシアは客間へと急いだ。
「お義姉様、ようこそいらしてくださいました」
客間の扉を開け、ディアナに歩み寄る。レティシアの顔を見ると、一目散に駆け寄ってきた。
「レティシアちゃん! 久しぶりねっ」
「お義姉様もお元気そうで良かったです」
抱き締められながら、言葉を幾つか交わす二人。互いに向き合うようにソファに腰を下ろし、カイラに淹れて貰った紅茶に口を付ける。
「手紙、読んだわ」
本題に入るディアナに、レティシアは息を呑む。今後の対応をどうすればいいか、アドバイスが貰えれば幸いだが――。
「私は、どうすればいいのでしょうか?」
「これはレティシアちゃんには辛いことかもしれない。それでもいい?」
「はいっ」
覚悟はできている。セシリアスタを狙う女性は数知れない。それを全てどうこうすることは出来なくても、対策があるのならば教えて欲しい。レティシアは真っすぐディアナを見つめた。
「なら、単刀直入に言うわ。招待状が来たなら行きなさい」
予想していたとはいえ、やはりそうするしかないらしい。覚悟は出来ている。だが、実際に敵地に赴くのは勇気がいることだ。レティシアは膝に置いた手を握り締めた。
「行って、そこで自分こそがセシルに相応しいのだと、公爵夫人なのだと見せつけてやりなさい」
「見せつける、ですか……?」
見せ付けるとは、どういったことを見せればいいのだろうか――。そう考えるレティシアに、ディアナは微笑んだ。
「サロンは社交の場よ。あなたはただ、普通に参加し、会話を楽しめばいいわ」
「それだけ、ですか?」
「ええ。それだけよ」
にこやかに微笑むディアナに、拍子抜けしてしまったレティシア。そんなレティシアに、ディアナは言葉を続ける。
「お友達が出来るかもしれないしね」
「友達……ライバルならば出来ました」
レティシアの言葉に首を傾げるディアナ。事の経緯を話すと、大笑いされてしまった。
「あははははは! それはいいわね! ジェーン伯爵は知人だから、話をしてみるわ。まずはジェーン伯爵邸のサロンに行ってみなさい」
「はい、わかりました」
「それにしても、ライバルね……面白い子ね、その子は」
メルヴィーのことはレティシアも気に入っている。ディアナにそう言って貰えて、何だか嬉しかった。
「レティシア様! 今日という今日はお聞かせくださいな!」
日除けの傘を差し、声高らかに扇子を向けてくるメルヴィーに、レティシアは「ごめんなさい」とお辞儀をした。それに腹を立てるメルヴィーだが、やけくそと言わんばかりに言葉を発した。
「もうっ! こうなったら、今日から私とあなたはライバルですわ!!」
「えっ」
突然の発言に驚くレティシア。ライバル……競争相手、好敵手という意味の言葉だ。友達とはいかなくても、特別な響きがある。レティシアは少しだけ嬉しくなった。だが、レティシアの背後にいるカイラが手を上げながら一言物申した。
「メルヴィー様、発言をしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんわ」
そう答えられ、カイラはにこやかに言葉を発した。
「お嬢様は既にご結婚なさっているので、ライバルもくそもないと思います」
その言葉に、メルヴィーもレティシアも、衝撃を受けた表情を浮かべた。
「そそそそ、そんなのどうでもいいのですわ! 兎に角、今日から私達はライバルです! いいですわね!」
「は、はいっ」
思わず頷いてしまったレティシアに、メルヴィーは笑顔を向けた。
「では、今日の所はここで失礼させていただきますわ」
「あ、メルヴィー様」
「なんですの?」
振り返るメルヴィーに、レティシアは言葉をかけた。
「礼拝はもうお済だったのですか?」
その問いに、メルヴィーは「ええ」と答えた。となると、メルヴィーはわざわざレティシアを待っていたことになる。それが嬉しくて、レティシアは微笑んだ。
「ありがとうございます。待っていてくださって」
「べっ、別にあなたを待っていたわけではありませんわ! そこははき違えないように!」
そう言い残し、メルヴィーは去って行った。
「いいんですか? お嬢様のことを勝手にライバルだなんて認識させちゃって」
不服そうなカイラの発言に、レティシアは微笑んだ。
「いいのよ。寧ろ嬉しいわ。私なんかにライバルだなんて言ってくださるんだもの」
それを聞き、カイラもアティカも、やれやれと肩を落とした。
屋敷に戻ると、使用人が駆け寄ってきた。
「奥様、ディアナ様がいらっしゃっております」
「お義姉様が?」
いったい、どうしたというのだろうか――。
「現在、客間にて対応しております」
「ありがとう、行ってみるわ」
使用人にそう言い残し、レティシアは客間へと急いだ。
「お義姉様、ようこそいらしてくださいました」
客間の扉を開け、ディアナに歩み寄る。レティシアの顔を見ると、一目散に駆け寄ってきた。
「レティシアちゃん! 久しぶりねっ」
「お義姉様もお元気そうで良かったです」
抱き締められながら、言葉を幾つか交わす二人。互いに向き合うようにソファに腰を下ろし、カイラに淹れて貰った紅茶に口を付ける。
「手紙、読んだわ」
本題に入るディアナに、レティシアは息を呑む。今後の対応をどうすればいいか、アドバイスが貰えれば幸いだが――。
「私は、どうすればいいのでしょうか?」
「これはレティシアちゃんには辛いことかもしれない。それでもいい?」
「はいっ」
覚悟はできている。セシリアスタを狙う女性は数知れない。それを全てどうこうすることは出来なくても、対策があるのならば教えて欲しい。レティシアは真っすぐディアナを見つめた。
「なら、単刀直入に言うわ。招待状が来たなら行きなさい」
予想していたとはいえ、やはりそうするしかないらしい。覚悟は出来ている。だが、実際に敵地に赴くのは勇気がいることだ。レティシアは膝に置いた手を握り締めた。
「行って、そこで自分こそがセシルに相応しいのだと、公爵夫人なのだと見せつけてやりなさい」
「見せつける、ですか……?」
見せ付けるとは、どういったことを見せればいいのだろうか――。そう考えるレティシアに、ディアナは微笑んだ。
「サロンは社交の場よ。あなたはただ、普通に参加し、会話を楽しめばいいわ」
「それだけ、ですか?」
「ええ。それだけよ」
にこやかに微笑むディアナに、拍子抜けしてしまったレティシア。そんなレティシアに、ディアナは言葉を続ける。
「お友達が出来るかもしれないしね」
「友達……ライバルならば出来ました」
レティシアの言葉に首を傾げるディアナ。事の経緯を話すと、大笑いされてしまった。
「あははははは! それはいいわね! ジェーン伯爵は知人だから、話をしてみるわ。まずはジェーン伯爵邸のサロンに行ってみなさい」
「はい、わかりました」
「それにしても、ライバルね……面白い子ね、その子は」
メルヴィーのことはレティシアも気に入っている。ディアナにそう言って貰えて、何だか嬉しかった。