魔法の使えない不良品伯爵令嬢、魔導公爵に溺愛される2
テトスの工房
ダグラスの港街テトスを馬車で南西に向かうと、件の工房があった。こぢんまりとしてはいるが、工房兼店のようになっているらしく中は多くの客で賑わっていた。セシリアスタとレティシアはキャリッジから降りると、その工房へと足を踏み入れた。
「いらっしゃーい」
若い女性の声が響く。店内に入ると、中は若い女性客でいっぱいだった。気の所為と思いたいが、大半の客がセシリアスタを見ているような気がしてならない――。レティシアはそっとセシリアスタの腕に自身の腕を絡め、隣を歩きだした。そんなレティシアの嫉妬も嬉しいのか、セシリアスタはレティシアに視線を向けたまま小さく口角を上げた。
「ここは洋裁店のようだな」
「みたいですね」
店の中には既製品の服や服飾用のパーツ、アクセサリーが陳列されている。その中に、魔糸も種類豊富に並べられていた。
「お客さんは観光ですかい?」
店主と思しき茶髪の女性が話しかけてきた。セシリアスタが港で聞いた話を話すと、女性は「ああ!」と頷いた。
「お客さんも魔糸のブレスレット目当てでしたか。配色も二色から決められますが、どれにします?」
そう言って、たくさんの色の魔糸を持ってきた。魔石の配合でたくさんの色の魔糸が作れるとは聞いていたが、籠いっぱいの魔糸を見て興奮してしまった。
「わあっ、綺麗です」
「ありがとうございます。魔力調整だけじゃなく魔力を加えて頑丈にするんで、願掛けにぴったりだと噂が広まって……解けると願いが叶うなんて噂まで広がっちゃいましたよ」
「そうなんですね」
魔糸を眺めながら話に頷くレティシア。ふと、セシリアスタの瞳の色と似たアイスブルーの糸があった。
「色、決まったら教えてください」
「私、このアイスブルーにします。セシル様は?」
「そうだな……君の瞳と同じアメジスト色にしよう」
そう言って、セシリアスタはアイスブルーとアメジストの魔糸を籠の中から取り、店主に手渡した。
「店主、この色で髪紐とブレスレットを二本ずつ作ってくれ」
「かしこまりました」
いそいそと店主が工房の方に行っている間、セシリアスタとレティシアは店内の服を見て時間を潰した。可愛らしさがコンセプトになっているようで、此処の店に飾られている服は膝下丈のフリルのたくさんあしらわれたものが多かった。
「ふむ……」
「セシル様?」
とある服の前で止まり何かを考えだすセシリアスタ。一体、どうしたというのだろうか? レティシアがそんなことを考えていると、他の店員に声を掛けた。
「この服で彼女のサイズに合うものは用意できるか?」
「かしこまりました。サイズ別に有りますので、試着をお願いいたします」
「え、え?」
店員とセシリアスタを見比べている間に、何故か試着室に案内されてしまった。サイズを測られ、試着をと服を寄越される。衿元からスカートの裾までレースとフリルたっぷりの藤色の可愛らしいワンピースに、レティシアはセシリアスタの好みなのだろうかと考えてしまう。だが、レースとフリルのたくさんあしらわれた服に可愛いと少し浮足立ってしまった。試着も済ませ、合ったサイズの服を紙袋に包んで貰っていると、作り終えたようで店主が店の方に戻ってきた。
「出来ましたよ。どうぞ」
「わあ……」
レティシアとセシリアスタの瞳の色で編み込まれた髪紐とブレスレットは魔糸独特の光沢を放ちとても綺麗だった。完成した商品を袋に詰めて貰い、店を後にした。
キャリッジに戻ると、その足でテトスを後にした。このまま首都のダグスに向かうとのことらしい。レティシアは首都がどんなところなのか、楽しみで仕方なかった。
「いらっしゃーい」
若い女性の声が響く。店内に入ると、中は若い女性客でいっぱいだった。気の所為と思いたいが、大半の客がセシリアスタを見ているような気がしてならない――。レティシアはそっとセシリアスタの腕に自身の腕を絡め、隣を歩きだした。そんなレティシアの嫉妬も嬉しいのか、セシリアスタはレティシアに視線を向けたまま小さく口角を上げた。
「ここは洋裁店のようだな」
「みたいですね」
店の中には既製品の服や服飾用のパーツ、アクセサリーが陳列されている。その中に、魔糸も種類豊富に並べられていた。
「お客さんは観光ですかい?」
店主と思しき茶髪の女性が話しかけてきた。セシリアスタが港で聞いた話を話すと、女性は「ああ!」と頷いた。
「お客さんも魔糸のブレスレット目当てでしたか。配色も二色から決められますが、どれにします?」
そう言って、たくさんの色の魔糸を持ってきた。魔石の配合でたくさんの色の魔糸が作れるとは聞いていたが、籠いっぱいの魔糸を見て興奮してしまった。
「わあっ、綺麗です」
「ありがとうございます。魔力調整だけじゃなく魔力を加えて頑丈にするんで、願掛けにぴったりだと噂が広まって……解けると願いが叶うなんて噂まで広がっちゃいましたよ」
「そうなんですね」
魔糸を眺めながら話に頷くレティシア。ふと、セシリアスタの瞳の色と似たアイスブルーの糸があった。
「色、決まったら教えてください」
「私、このアイスブルーにします。セシル様は?」
「そうだな……君の瞳と同じアメジスト色にしよう」
そう言って、セシリアスタはアイスブルーとアメジストの魔糸を籠の中から取り、店主に手渡した。
「店主、この色で髪紐とブレスレットを二本ずつ作ってくれ」
「かしこまりました」
いそいそと店主が工房の方に行っている間、セシリアスタとレティシアは店内の服を見て時間を潰した。可愛らしさがコンセプトになっているようで、此処の店に飾られている服は膝下丈のフリルのたくさんあしらわれたものが多かった。
「ふむ……」
「セシル様?」
とある服の前で止まり何かを考えだすセシリアスタ。一体、どうしたというのだろうか? レティシアがそんなことを考えていると、他の店員に声を掛けた。
「この服で彼女のサイズに合うものは用意できるか?」
「かしこまりました。サイズ別に有りますので、試着をお願いいたします」
「え、え?」
店員とセシリアスタを見比べている間に、何故か試着室に案内されてしまった。サイズを測られ、試着をと服を寄越される。衿元からスカートの裾までレースとフリルたっぷりの藤色の可愛らしいワンピースに、レティシアはセシリアスタの好みなのだろうかと考えてしまう。だが、レースとフリルのたくさんあしらわれた服に可愛いと少し浮足立ってしまった。試着も済ませ、合ったサイズの服を紙袋に包んで貰っていると、作り終えたようで店主が店の方に戻ってきた。
「出来ましたよ。どうぞ」
「わあ……」
レティシアとセシリアスタの瞳の色で編み込まれた髪紐とブレスレットは魔糸独特の光沢を放ちとても綺麗だった。完成した商品を袋に詰めて貰い、店を後にした。
キャリッジに戻ると、その足でテトスを後にした。このまま首都のダグスに向かうとのことらしい。レティシアは首都がどんなところなのか、楽しみで仕方なかった。