A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 チェックアウトを2回延長して、ホテルを出たのは終電ぎりぎりの時間。
 手をつないで、走って駅に向かった。

 もう少しぐずぐず支度すればよかった。
 そうすれば、泊まっていけたかもしれないのに。

 離れたくない。
 もっと一緒にいたい。
 ずっと、永遠に。

 電車のドア隅で抱き合ったまま、大翔の胸にもたれかかり、渚は離れたくないと小さな声で呟く。
「俺も……」と大翔も答えてくれる。

 駅から渚のアパートまで送ってもらうときも、心は沈んだまま。
 あと少しで別れなければならないんだから、何か話をしなきゃと思うけれど。
 そういうときに限って、話題が浮かばない。

 大翔はもともと無口で、渚が話しかけないと沈黙してしまうことが、しょっちゅうだった。

 一歩一歩家に近づくにつれ、渚の足取りは重くなっていく。
 
 渚はつないでいる手に力を籠める。
 すると大翔はまるで子供をあやすように頭を撫でてくれる。
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