A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 大翔はいつも優しい。
 渚が求めれば、なんでも与えてくれる。
 甘い言葉も、優しいキスも。

 でも、もし、求めなければどうなるのだろう。
 怖くて、渚にはそんなこと、試せないけれど。

 だから、渚はできるだけ可愛く甘える。

「次はいつ会えるの?」

 不安なんて一切、感じていないとでもいうように。

「来週の週末は用事があるから、その次かな」
「わかった。じゃあ、また連絡待ってる」
「ああ」

 去って行く後ろ姿を眼で追っているときは、寂しすぎて死にそうになる。

 でも、その分、会えたときの喜びが何倍にもなるんだから。

 そう無理矢理自分を納得させ、渚は部屋に戻った。

 けれど、次の逢瀬は永遠に訪れなかった。

 大翔は、決して手の届かないところに行ってしまった。
< 12 / 48 >

この作品をシェア

pagetop