A Maze of Love 〜縺れた愛〜
そのような家に育った大翔は孤独な子供だった。
裕福だったので、欲しいと言えばなんでも買い与えてくれたが、大量のおもちゃに囲まれていても、寂しい気持ちは埋まらなかった。
でも綿貫凪咲に出会った日から、大翔はひとりぼっちではなくなった。
庭のかたすみにチューリップが咲いていたから、4月か5月だったのだろう。
幼稚園から帰ると、見知らぬ女の子が花壇のまえにしゃがみこんでいた。
「わあ、きれい」と目を輝かせて。
「だれ?」大翔が尋ねると、女の子はびくっとして立ちあがった。
「こんにちは。わたぬきなぎさです。あなたは?」
ぴょこんと頭を下げて、はきはきした声で答えた。
「ひろと。しばたひろと」
「なんさい?」
「えーと、むっつ」
「じゃ、なぎさのほうが大きいよ。もう7歳だもん」
さらさらの長い髪を高い位置でふたつ結びにした、パッチリした大きな目が印象的な子だった。
うさぎのキャラクターがついたTシャツにデニムのミニスカートをはいていて、脚がすらっと長かった。
大翔は尋ねた。
「なんで、うちにいるの? 遊びに来たの?」
「引っ越してきたの。今日からここがおうちだって、ママが言ってた」
裕福だったので、欲しいと言えばなんでも買い与えてくれたが、大量のおもちゃに囲まれていても、寂しい気持ちは埋まらなかった。
でも綿貫凪咲に出会った日から、大翔はひとりぼっちではなくなった。
庭のかたすみにチューリップが咲いていたから、4月か5月だったのだろう。
幼稚園から帰ると、見知らぬ女の子が花壇のまえにしゃがみこんでいた。
「わあ、きれい」と目を輝かせて。
「だれ?」大翔が尋ねると、女の子はびくっとして立ちあがった。
「こんにちは。わたぬきなぎさです。あなたは?」
ぴょこんと頭を下げて、はきはきした声で答えた。
「ひろと。しばたひろと」
「なんさい?」
「えーと、むっつ」
「じゃ、なぎさのほうが大きいよ。もう7歳だもん」
さらさらの長い髪を高い位置でふたつ結びにした、パッチリした大きな目が印象的な子だった。
うさぎのキャラクターがついたTシャツにデニムのミニスカートをはいていて、脚がすらっと長かった。
大翔は尋ねた。
「なんで、うちにいるの? 遊びに来たの?」
「引っ越してきたの。今日からここがおうちだって、ママが言ってた」