A Maze of Love 〜縺れた愛〜
「やめてぇーーーーーー」
 凪咲が叫ぶ。

 どん、と大きな音がした。
 凪咲が突き飛ばされたようだ。

 立ちあがろうとしても、足に力が入らない。
 そこここに痛みが走る。
 必死で唇をかんで耐えていたけれど、必死で唇をかんで耐えていたそのとき、
 
 急に一馬が、自分の上に倒れこんできた。
「何を……する」一馬が呻いた。

 凪咲が震える声で言った。
「大翔が……殺されると思ったから」
 
 痛む体を無理やり引き起こし、大翔が立ち上がると、一馬が背中に刃物を刺したまま、うつぶせになっていた。
 はあはあと激しい息をして、内ポケットからスマホを出そうとしている。

「この……アマ」

 痛みに耐えながら、一馬は110番しようとしている。
 一馬は立ち上がり、その手からスマホを奪った。
 そして、一馬の背中の刃物を引き抜いた。

 もう、終わりにしよう。
 大翔は一馬の姿を見て、そう思った。

 思えば、彼も気の毒な人間だ。
 元を正せば、父親の身勝手からはじまったことだ。

 彼を殺して、俺も命を絶とう。
 息子たちがそれだけのことをしでかせば、おそらく父親が生涯をかけて大きくした店はつぶれるだろう。
 それがせめてもの報いだ。

 大翔は血濡れた刃を彼の首にあてがった。
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