A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 でも、気づいてしまった。
 もしあの世で彼に会えたとしても、彼には凪咲さんがいるということに。

 それに気づいて、ようやく彼のために死ぬなんて、ばかばかしいことだ、と思えた。

 そして久しぶりに、本当に久しぶりにお腹が空いているのを感じた。

 鏡を見たら、あまりにもひどい顔をしていた。
 だからマスクをかけ、帽子を被って、10日ぶりに外に出た。

 コンビニに行き、焼き肉弁当とグリーンスムージーと期間限定の窯焼きシュークリームを買って帰った。

 全部食べたら、少し元気が出て、そして、泣いた。

 やっと泣けた。
 溜まっていた10日分の涙が、ダムが決壊したように、とめどなく溢れた。

 そのまま、倒れこむように床の上で眠った。
 あまりにも泣きすぎたからか、大翔の死を知ってから、ずっと続いていた不眠状態は解消した。

 夢も見なかった。
 眠ったら大翔の夢を見るんじゃないかと、ずっと恐れていたのだけれど。


 目覚めると、空は青く澄み切っていて、強烈な日差しが降り注いでいた。

 その日、東京は例年よりも3日早く梅雨が明けた。

(終)
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