海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します
アトランティスは2つの顔がある。
1つは活気溢れ、陸の世界にある地中海の観光地みたいな街で、もう1つは神兵の目を盗み、麻薬や人身売買、違法武器販売など表では絶対に出せない商売をしてる街、闇の街がある。
オーシャン全体の深い情報が欲しいなら、闇街の方が手に入りやすい。

アトランティスの中央道から西に行き、川沿いに行くと人気がなく、建物と建物の間に狭い路地ある。
普通の奴なら普通に通ってもなんともない路地だが…。

「ガハイム」

闇街に入るには特定の呪文を言わないと入れない、術士特有の結界。
そう、闇街は術士が作り上げた街で裏の術士の街と言われている。

俺は秘密の呪文を唱えると、何も無かった路地から隠し通路が現れた。
辺りを警戒しながら、ゆっくり入ると入口は閉じ闇街に着いた。

闇街でも人が溢れ嫌な活気だ。
麻薬の独特な甘ったるい匂いや、闇市の匂いが鼻の奥に刺さる。
師匠に連れられて何回も来たが、今となってはあんまり行かなくなったが、やはりここの空気は好きではない。

「久しぶりに来たな…。とりあえず、アイツの所に行くか。」


師匠の数少ない友人であり元7天の戦士。
俺と同じ術士と魔法が使える2つ持ちであり、あの師匠が認める程の強さを持つ男。
今は7天の戦士を引退し闇街にて、情報屋兼雑貨屋をしてる。

そんな入り組んだ道を歩き、しばらくすると目的の人物がいる場所に辿りついた。

雑貨屋と書かれた小さな店
  
「あんまり来たくはなかったが…」
「もっと来てもいいのよ?」

後ろから会うと奴の声がして、振り向くと赤い長髪に銀色の長い尾鰭をうねらせ、黄色の瞳を光らせて妖艶に笑う男が現れた。

「俺が双璧の名を受け継いだ以上、中々来られないの知ってるだろ、リィゲリア」
「あらぁー寂しい事を言うのね、まぁ…とりあえず入って要件は大体分かるから」
「話が早いのは助かる」

リィゲリアの店に入るのは久しぶりで、相変わらず店の中はリィゲリアが吸う海藻大麻の甘ったるい匂いが充満してる。

「要件は知ってるけど、念の為聞こうじゃない?」
「俺の師匠、リヴィアタンについて今分かる情報全てだ」
「全てねぇ…」
「なんだ、金か?金ならある」
「いやぁ、金は要らないわ…」

リィゲリアは俺の方に近づく。

「そうねぇ…身体が欲しいかしら?」
「俺はそっちのオスの趣味はない」
「分かってるわよ、私も流石に番がいるオスには手は出さないわ。なに?手を出して欲しい?」
「やめろ」
「冗談よ」

ニヤつかせながら、リィゲリアは番台に座る。
コイツはリュウグウノツカイ族では…いや、俺らの種族では珍しいくらい、オス色もあり顔はイケメンで、着痩せはしているが引き締まってる為メスからも人気が高い為かコイツを求めて、雑貨を買う奴が多い。

「で、なぜ俺の身体が欲しい?」
「それはね…」

嫌な予感しかしない…。
コイツに関して今まで良い過去がない。
なんせコイツは…。

「あなたを題材にしたオス色新作小説と挿絵を描きたいのよー!!!」
「………だろうと思ったよ」
「もう、最近アナタが来なかったからネタと妄想が尽きてるのよ!!前作のリヴィアタン×セラネタがもう絶賛でー!!一族を滅ぼされ身寄りのない少年を、1人の冷酷戦士が気まぐれで拾い育てたら、見事な青年になり青年は育て親でもあり、師匠に恋をする!!なんて素晴らしい!!さぁさぁ、早く上着とズボン脱いでちょーだい!!早く!!私はアナタをスケッチしたいのよ!!あわよくば、アナタの大胸筋触らせて!そしたら、アナタが欲しい情報全部あげようじゃない!!」

息を荒々しくし紙とペンを持ちながら、勢いよく俺に近付こうとする。

「気持ち悪いこれ以上近づくな」
「あら、そんな事言っていいのぉ?リヴィアタンの情報要らないの?」

いやらしい目付きでリィゲリアが俺を見つめる。
しかし、ここで引けば情報が手に入れられない。
気持ち悪いながらも、アオの為ならば我慢するしかない。

「…アオの為だ……そう、アオの為……仕方ない。少しだけだ」

リィゲリアは俺の大胸筋を両手で鷲掴みし、いやらしいく揉む。

「おーー!!また身体鍛えた??いやぁー!アナタの大胸筋は美しい!!素晴らしい!!」

そう、コイツはオス色と官能小説作家でそれなりにメスに人気な作家だ。

「もう、いいだろ……離せ。…なんで俺なんだ…仮にもお前は元7天の忍辱の戦士のくせに…」
「戦士なんて好きなようなことできないのよ、なんなら私みたいな奴には生きづらいのよ!金はよかったけども!…それよりアナタの方がいいのよ!鍛えに鍛え上げられた身体。オスらしさもあるが、濃ゆくもない美しい顔。見た目がもう攻めなのよ!!あぁ、あの攻めに見えるリヴィアタンが、歳下弟子に気持ちよく攻められるなんて…たまんないわ!!」

リィゲリアは目を輝かせ興奮しながら、筆を走らせる。
リィゲリアの指示で様々なポーズをとらされたが、どれもが羞恥心が出るようなポーズばかりで、リィゲリアを1発殴りたい気分だ。
しかし、アオの為ならば仕方ない。

「よーし、もうしばらくは書き続けられるかなー?」
「で、情報だ」
「やーね、焦らせるオスは嫌われるわよ?」
「…………」
「はいはい、そんなに怖い顔しないで?教えてあげるわ」

リィゲリアはニヤニヤと嫌らしい顔をしながらも、ちゃんと情報を話した。
それを俺は服を着ながら聞いた。

魔界に追放された師匠は、神兵の目を盗んでは足跡を残さないように、魔界、深海、天海を行き来してるらしく、何故そこまでするのかは分からないとリィゲリアは言った。
だが、もう1つの情報では師匠はどうやら深海7天に選ばれたらしく、近々天海にきてもおかしくはないということ。


「…まぁ、私が知る情報はこれくらいかな」
「…そこまで情報あれば充分だ」

情報を得るならやはりリィゲリアだ。
リィゲリアはオーシャン1情報網が広い。
コイツが情報屋だと知ってるのは極わずかで、コイツに気に入られない限り情報は渡されない。
まぁ、気に入られたら…いや、死ぬほど気に入られたら俺みたいな扱いになる。

「それにしても、今までメスに興味が無かったアナタがあのメスの為にそこまでするのね」
「やはり分かるのか…大したものだな読心術ってのは」
「その言葉そっくりそのまま返すわ、お互い術士一族の生き残りなんだから」
「…………」
「いつまで仲間やあのメスに隠すつもり?あなたも分かるとおもうけど、術士はこの世界では希少価値でもあり最悪な存在だって」
「分かってる…だから似たようなアンタが必要だ。俺の力を秘密に出来る奴がな」

俺はお礼程度にお金を渡す。

「あらあら、いい事言うじゃない?アナタが初めて来た時は、リヴィアタンの後ろに小魚ちゃんみたいに引っ付く可愛い子どもだったのにね」
「俺はもう子どもじゃない…。情報提供感謝するリィゲリア…」
「はいはい、また何時でも来てちょうだい」

俺はリィゲリアの店を後にした。
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