海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します
「さぁさぁさぁ!皆の衆!100年に1度のオーシャンバトルが始まったぞぉぉ!」
『うぉぉぉぉ!!』
「天海と深海の均衡を保つために始まったこの闘い!!繰り返し繰り返し早7億年!!天海のポセイドンと深海のリヴァイアサンに選ばれし7天達が番と共に魂と願いを掛けて闘うぞぉぉ!」
『うぉぉぉぉ!!』
「そして俺は、今回バトルマスターを務めることになった、ポセイドンの息子トリートーンだ!!メス共俺と番になりたいかぁぁ!!」
『きゃぁぁぁぁ!!トリートーン様ぁぁぁ!!』
「いい反応だ!さて、前フリはここまでにしよう!!なんせ、今日は初戦から熱い闘いだからな!!双璧師弟対決!!天海を100万の悪魔軍から1人で1夜にして護り抜いた、しかし!禁忌を犯し深海に堕とされた最強戦士元双璧リヴィアタン・クレイ!!そして、リヴィアタンから双璧の術を習い最強の双璧を受け継いだ双璧戦士!!セラ・クロッソ・シーラカンス」
名前を呼ばれた瞬間に周りの観客が物凄い歓声を上げる。
観客の声が身体に響いてくる。
そんな中で1人の男だけは、周りを気にせずに立っていた。
師匠は姿は昔とは変わらない…傷だらけの耳鰭に鋭い視線。
師匠と共にしてきたから分かってしまう。
師匠は本気で俺とアオを殺しにくる。
「2人共は既に番の準備はできてるか?出来てるよなぁ??」
「………」
「…………」
「さぁ!始めるぞ!!バトル開始だぁぁぁ!」
ゴォォォン!!
開始の合図が闘技場に鳴り響いた。
「あれが…父さん…全く動かない」
「油断はするなアオ、師匠は頭の中で何万通りの戦い方を瞬時に頭でイメージしてる」
「じゃ、どうすればいいのさ!?」
「昨日の修行で話したように、師匠には今の俺の魔法じゃ全て弾かれる。だが、俺達双璧は護りながら戦うが、攻めるときには魔法が使えない。その時にお前が得意な格闘で攻め、スキがあればお前の精神を師匠に移す!そして師匠に問いかけろ!」
「あぁ!洒落臭い!!!分かった!とりあえずやるのみってことだね!!」
地面を強くけり、アオは素早く師匠に一気に攻め込む。
「はぁぁぁ!」
「…………」
ガッガッガッ
「まだまだぁ!」
何度も何度も師匠に素早く攻める。
師匠に考える隙を与えないように!
「ほう?昔よりかはまともな戦い方をするな…」
「俺だって、あなたの2つ名を受け継いだ身としては、昔よりかは成長してます!」
「だが、格闘だけじゃ俺には勝てないのはお前が知ってるだろ?」
「ッ…!?」
師匠は俺達の格闘を軽々しく受け止めたり、避けたりと攻撃が与えられないし、隙が無さすぎる。
流石だと言いたくなるほど、師匠の強さには敵わない。
全ての攻撃を上手く受け流し、尚且つ片腕で俺達を捉えてる!
パンパンガッ!
「んぐぐぐ…」
「どうした?強くなったんじゃないのか?」
「ぐぐ……!!まだまだぁ!!」
格闘時は師匠も俺も魔法は使えない、互いに攻撃を交わしながら素早く攻めるの繰り返し。
何度も何度も何度も、時には魔法を使って身を護ったりとするが、師匠の攻撃の一撃がデカすぎて魔力を削られていく。
攻撃される度に闘技場が揺れ、観客達が盛り上がっていく。
「はぁはぁ…セラ」
「どうした…」
「なんか…身体がおかしいんだ、思いっきり殴ってる筈なのに力が…」
「身体が?…まさか!?」
闘いに夢中で忘れてしまっていた!
師匠は、闘いながら俺達の魔力を引き出す為の魔点を素早く突くのが得意なのを!
「まだ甘いなセラ」
「っ…」
魔力が練れなくなり、おまけにアオが初めて突かれてたせいか、身体に力が入らなくて、膝から崩れ落ちる。
「お前の魔点は全てついた、魔力を出す事も練るのも無理だ…今なら間に合う、直ぐに棄権しろ。命は助けてやる」
「…はは、師匠…師匠は俺が…師匠が嫌がる程負けず嫌いなのを知ってますよね?」
「大した者だな、まだそんな軽口が聞けるとは」
「!?」
ドス!
師匠の重い蹴りが腹部に入り、勢いよく飛ばされて闘技場の壁にぶつかる。
「んぐぁあ!」
衝撃により、吐血をしてしまう。
「弟子であるお前も知ってるよな?俺が闘いになれば容赦はしないことを…」
「んぐ…」
壁から剥がれ崩れ落ちる。
肋骨が2本折れてるのが痛みで分かり、俺ならともかくアオにとっては想像絶するような痛みを感じているはずだ。
「つ……」
「アオ!!」
アオは身体を無理やり動かし、立ち上がる。
「アオ…大丈夫か」
「…だ、大丈夫……」
「よかった…」
「父さん…私の事分からない?気づいてない?」
「まだ気づいてないみたいだ…」
「……父さん」
アオは少し切ない表情をした瞬間覚悟を決め、両手を思いっきり合わせた。
パン!!
「アオ!?」
アオのその姿勢は魔力を練る体制で、修行の基礎の基礎の体制だ。
毎日毎日と嫌になるほど、修行前には必ずしていた体制。
「何をしている?お前は魔力はもう練れない…諦めろ」
「っ…アオ、魔力は魔天を突けられて、練れない!攻撃を防ぐしか、今は出来ない!」
「馬鹿野郎!!なんで諦める!」
「!?」
「うぐっ…がはっ…なんで、やりもしないのに諦めるんだよ!!私はまだ、闘える。闘うんだ!!」
アオは血反吐しながらも力を振り絞って、練れないはずの魔力を練り始めた。
「アオ…」
「セラ!私は諦めない、父さんを取り戻すまで絶対に諦めない!手足折れても無くなっても、首だけになっても取り戻してやる!絶対に!」
そうだ、アオはどんなに苦しくても辛くても自分の夢の為に諦めなかった。
1番隣にいて見てきた俺が忘れてはいけないことだった。
アオは俺が想像する以上に、どんなにも屈しない強い心を持ってる。
「そうだな…お前は諦めてないのに俺が諦めたらいかんよな」
アオは諦めてない…アオを護らないといけない俺が諦めたらいけない!
「アオ!俺も力ある限り練り続ける!だからお前も全力で練ろ!」
「おう!!」
俺とアオは互いの意識を同調し、魔力をねり始める。
最初は練れなかった魔力が、少しずつ水が湧き上がるかのように溜まりに溜まっていく。
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
魔力が溢れ出て、俺たちを包んでいく。
「なっ…」
師匠がまさかの事に驚いている。
「セラ…」
「アオ…」
「これで魔力は十分に溜まった、私は闘える」
「俺もだ…行くぞ!」
「おう!!」
俺達は再び師匠にたたみかけた、今度は突かれないように素早くかわし、護りながら攻撃をしていく。
「っ…!?しかし、なぜ…お前から俺の魔力を感じる………まさか」
「…そのまさかですよ師匠…あなたは予知は出来るが俺だってところまでは予知が出来なかったみたいだ」
「………」
「運命なのか分からないですが、俺の番は師匠…アナタが1番愛したメス…ホタル。ホタルの娘。あなたの愛娘、深海アオだ!!」
「!?!?!?」
「俺も真実を知った時は驚かされました…そして今も俺はあなたに驚いてる…なんせ、師匠の瞳…師匠の番でアオの母親、ホタルの魂が宿っている。本来、番が亡くなれば契約は無くなる…。だけど、あなたはアオの母親の事を愛してるが故に、瞳を代価に魂の契りをする事によって、亡き者と永遠に共になれ……っ!?」
ドゴォォォォォン!!
「つ!?」
一瞬の隙に師匠が俺の頭を掴み一気に地面に叩き付けられた。
見えなかった…。
そして、頭部から出血してるのが分かる。
「まさかお前がアオと番になるとは思わなかった…だが、お前のせいで俺の計画全てが無くなる事になる」
「っつー…やはりそうだったんですね」
「これ以上知ったような口を聞くならば、そのままお前の頭蓋骨ごと砕いてやる」
「くっ…はは!」
「何がおかしい?」
「師匠、あなたはやはりどんなに冷静さを保っていても、自分の娘がこうして自分の相手で戦ってる事に、少し抵抗があるみたいだ…。冷酷で残忍な戦士としてのあなたならその攻撃で俺を直ぐに殺せる筈だ…。なのにしなかった!やはりあなたの心にはまだ迷いがある!まぁ、そのおかげで、これでようやく師匠を捕らえることができたが…行くぞアオ!!」
「うん!」
「!?!?」
師匠の腕を掴み、アオの精神だけ師匠の中に入れた。
今の俺達は師匠倒す事は出来ない…ならば直接問いかけて、悪から善に変えさせる。
神…ポセイドン様なら師匠の行いも心内も分かってくれるはずだ。
「ん…ここは?」
「俺の精神の中だ…あの馬鹿弟子…まさかアレを使うとはな…」
「…あっ…あ…」
「アオ…。今の姿じゃ、分かりづらいか?なら昔の姿に…」
「父さん!!」
ギュッ
私は目の前にいる自分の父親に抱き着いた。
記憶が曖昧な筈なのに、父さんの懐かしい姿が私の記憶を蘇らせた。
「あぁ…父さん…」
「…アオ」
父さんは大きな手で私の頭を優しく撫でる。
覚えてるこの感じ、小さい頃に頭をよく撫でられてた。
嬉しさのあまりに涙が止まらず流れ出る。
「うわぁあ……父さん!会いたかったよぉ!」
「すまなかった…お前を1人にしてしまって」
「ひっく…いいんだぁ、だって父さん…父さんがこうして生きてるし…ひっく…うっ…それに、父さんはオーシャンを…世界を守る為に1人で戦ってるのも」
「…全部知ったのか?」
「ううん、全部じゃない…セラもこの1年一緒に調べたの…全部じゃないけど…私思い出したんだ…父さんはあの時…父さんの力を受け継いだ私を狙ってた天海人に連れて行かれそうになった時、私を助ける為に罪人として深海に堕ちて任務を続けていたんでしょ?」
「………」
「そして、私に会わない状態で母さんとも会っていた…母さんは小さかった私に嘘をついてまで、夜な夜な海に行ってたの知っているから…」
「…やはり、ホタルの奴は本当に嘘が苦手だな…アオにもこうもバレてるとは…。…お前が言った通りだ…俺は禁忌を犯しお前を授かった…だが、お前の力は強すぎた…強い力は深海…。いや魔海軍の標的になった。だから、お前を探し隔離し均衡を保つために天海軍がきた。ポセイドン様にはもうお前が産まれた時から、存在を知られていた。だから、あの時のような事が起きてしまった…」
「そして、力を持つ為に番だった母さん…母さんの魂と契約をし母さんと一緒に…」
父さんは私の目線に合わせるようにしゃがみ、優しく両頬に触れた。
「母さんにそっくりだ…瞳の色は俺似になってしまったが…」
「父さん…」
私は父さんの手を優しく握った。
父さんの手は戦士とは思えなくて、父親らしい温もりだ。
「私もセラも一緒に戦うから!だから、もう1人で戦わなくていい!!」
「…………」
「父さんからしてみたら、私はまだまだ子どもだけど…私からしたら父さんが今もこうして苦しそうに戦うのは見たくない…母さんを亡くした悲しみは私にもある…母さんや父さんがいなくなってから私も虐めてきたヤツらと戦ってきた…父さんみたいに戦ってきた…同じ悲しみがあるなら、同じ幸せな道も行けると思う……だって…」
『親子だから』
アオのその優しい言葉が、一瞬リヴィアタンにとって最愛の人の姿と重なった。
「っ!?……ホタル……」
「父さん??」
「……そっか…そうだよなホタル…俺達の娘は小さいままじゃない…成長し大人なってる…アオ…セラとならもしかしたら本当に一緒に世界を救えるかもしれない…」
父さんは優しく手を握った。
「アオ、父さんは直ぐとはお前達のところにはいけない…やるべき事があるからな…それが終わり次第お前達の所にいく…約束だ」
「父さん…」
「このバトルは俺が悪から善に変わったと、トリトーンに言って俺が棄権する」
「!!!!??」
「だから、少しだけ待っててくれ」
「分かった!父さんまってる」
師匠は俺の腕から離れた瞬間、アオの意識が戻ったのを感じた。
「アオ、なんとかやれたのか?」
「おい…バトルマスター」
「あ、なんだ?」
「俺はこの闘いを棄権し、悪から善に変わった事を宣言する」
「なっ!?なんという事だ!あの最強戦士が棄権!?!?せっかくの盛り上がりの途中で棄権!一体誰が…」
「もういいだろうトリトーン」
「と、父ちゃん!?」
トリトーンの背後から海水と一緒に海神のポセイドンが現れた。
「1連のやり取り見ていたぞリヴィアタン」
「ポセイドン様…」
「お主は天海をあの惨劇から救った事も、今こうして魔界軍から天海を護ってるのも分かる。じゃが、禁忌を犯したことには変わりはない。しかし、父親と娘をこれ以上離れ離れにする権利は私達にはない…。それで」
「…………」
「……条件付きでお前を天海に戻す。1年はイッカクを監視役としてお前のそばに置く、分かったな?」
「あぁ…」
『なんという事だぁぁ!悪から善に変わったぁ!!!稀に見られない決着の付け方だ!!』
「出来の悪い弟子と番に色々言われたからな……感謝しますポセイドン様」
「いいんだ、ワシにも子がいるからな…親子は誰にも引き裂くことは出来ない」
師匠は少し呆れたような表情しながらも、俺の方を見た。
「セラ、アオのことを頼む…かなり魔力を使ってるから、多分合体を解いたらアオの奴気絶してるかもしれないからな…。あいつが目覚める頃に戻れるようにはする」
「分かりました師匠…俺達の声に応えていただきあり…」
「あと、セラ」
「なんですか??」
師匠の表情が一気に黒くなった…まずいあの表情は…非常にまずい。
あの表情は、俺が弟子の時に散々見てきた、師匠の殺意ありの怒り!
「お前、アオの首筋に魔法呪を残したな?俺が分からなかったと思ったか?」
師匠が物凄い殺気を飛ばしながら、少しづつ迫り来る。
「!?!?!?」
「しかもなんだ、アオの左手の薬指の指輪」
「…………」
「おい、何故無言で俺をみない?」
「いや、その…それは」
「まぁ、いい後でその話を…師匠…いや、父親として聞くとしよう」
目が笑ってない……。
師匠には俺とアオがどこまでしてきたのか全て見抜かれていた。
父親として当然な反応だろう……。
多分この後俺は師匠に110年振りに思いっきりしばかれるのだと悟った。
『うぉぉぉぉ!!』
「天海と深海の均衡を保つために始まったこの闘い!!繰り返し繰り返し早7億年!!天海のポセイドンと深海のリヴァイアサンに選ばれし7天達が番と共に魂と願いを掛けて闘うぞぉぉ!」
『うぉぉぉぉ!!』
「そして俺は、今回バトルマスターを務めることになった、ポセイドンの息子トリートーンだ!!メス共俺と番になりたいかぁぁ!!」
『きゃぁぁぁぁ!!トリートーン様ぁぁぁ!!』
「いい反応だ!さて、前フリはここまでにしよう!!なんせ、今日は初戦から熱い闘いだからな!!双璧師弟対決!!天海を100万の悪魔軍から1人で1夜にして護り抜いた、しかし!禁忌を犯し深海に堕とされた最強戦士元双璧リヴィアタン・クレイ!!そして、リヴィアタンから双璧の術を習い最強の双璧を受け継いだ双璧戦士!!セラ・クロッソ・シーラカンス」
名前を呼ばれた瞬間に周りの観客が物凄い歓声を上げる。
観客の声が身体に響いてくる。
そんな中で1人の男だけは、周りを気にせずに立っていた。
師匠は姿は昔とは変わらない…傷だらけの耳鰭に鋭い視線。
師匠と共にしてきたから分かってしまう。
師匠は本気で俺とアオを殺しにくる。
「2人共は既に番の準備はできてるか?出来てるよなぁ??」
「………」
「…………」
「さぁ!始めるぞ!!バトル開始だぁぁぁ!」
ゴォォォン!!
開始の合図が闘技場に鳴り響いた。
「あれが…父さん…全く動かない」
「油断はするなアオ、師匠は頭の中で何万通りの戦い方を瞬時に頭でイメージしてる」
「じゃ、どうすればいいのさ!?」
「昨日の修行で話したように、師匠には今の俺の魔法じゃ全て弾かれる。だが、俺達双璧は護りながら戦うが、攻めるときには魔法が使えない。その時にお前が得意な格闘で攻め、スキがあればお前の精神を師匠に移す!そして師匠に問いかけろ!」
「あぁ!洒落臭い!!!分かった!とりあえずやるのみってことだね!!」
地面を強くけり、アオは素早く師匠に一気に攻め込む。
「はぁぁぁ!」
「…………」
ガッガッガッ
「まだまだぁ!」
何度も何度も師匠に素早く攻める。
師匠に考える隙を与えないように!
「ほう?昔よりかはまともな戦い方をするな…」
「俺だって、あなたの2つ名を受け継いだ身としては、昔よりかは成長してます!」
「だが、格闘だけじゃ俺には勝てないのはお前が知ってるだろ?」
「ッ…!?」
師匠は俺達の格闘を軽々しく受け止めたり、避けたりと攻撃が与えられないし、隙が無さすぎる。
流石だと言いたくなるほど、師匠の強さには敵わない。
全ての攻撃を上手く受け流し、尚且つ片腕で俺達を捉えてる!
パンパンガッ!
「んぐぐぐ…」
「どうした?強くなったんじゃないのか?」
「ぐぐ……!!まだまだぁ!!」
格闘時は師匠も俺も魔法は使えない、互いに攻撃を交わしながら素早く攻めるの繰り返し。
何度も何度も何度も、時には魔法を使って身を護ったりとするが、師匠の攻撃の一撃がデカすぎて魔力を削られていく。
攻撃される度に闘技場が揺れ、観客達が盛り上がっていく。
「はぁはぁ…セラ」
「どうした…」
「なんか…身体がおかしいんだ、思いっきり殴ってる筈なのに力が…」
「身体が?…まさか!?」
闘いに夢中で忘れてしまっていた!
師匠は、闘いながら俺達の魔力を引き出す為の魔点を素早く突くのが得意なのを!
「まだ甘いなセラ」
「っ…」
魔力が練れなくなり、おまけにアオが初めて突かれてたせいか、身体に力が入らなくて、膝から崩れ落ちる。
「お前の魔点は全てついた、魔力を出す事も練るのも無理だ…今なら間に合う、直ぐに棄権しろ。命は助けてやる」
「…はは、師匠…師匠は俺が…師匠が嫌がる程負けず嫌いなのを知ってますよね?」
「大した者だな、まだそんな軽口が聞けるとは」
「!?」
ドス!
師匠の重い蹴りが腹部に入り、勢いよく飛ばされて闘技場の壁にぶつかる。
「んぐぁあ!」
衝撃により、吐血をしてしまう。
「弟子であるお前も知ってるよな?俺が闘いになれば容赦はしないことを…」
「んぐ…」
壁から剥がれ崩れ落ちる。
肋骨が2本折れてるのが痛みで分かり、俺ならともかくアオにとっては想像絶するような痛みを感じているはずだ。
「つ……」
「アオ!!」
アオは身体を無理やり動かし、立ち上がる。
「アオ…大丈夫か」
「…だ、大丈夫……」
「よかった…」
「父さん…私の事分からない?気づいてない?」
「まだ気づいてないみたいだ…」
「……父さん」
アオは少し切ない表情をした瞬間覚悟を決め、両手を思いっきり合わせた。
パン!!
「アオ!?」
アオのその姿勢は魔力を練る体制で、修行の基礎の基礎の体制だ。
毎日毎日と嫌になるほど、修行前には必ずしていた体制。
「何をしている?お前は魔力はもう練れない…諦めろ」
「っ…アオ、魔力は魔天を突けられて、練れない!攻撃を防ぐしか、今は出来ない!」
「馬鹿野郎!!なんで諦める!」
「!?」
「うぐっ…がはっ…なんで、やりもしないのに諦めるんだよ!!私はまだ、闘える。闘うんだ!!」
アオは血反吐しながらも力を振り絞って、練れないはずの魔力を練り始めた。
「アオ…」
「セラ!私は諦めない、父さんを取り戻すまで絶対に諦めない!手足折れても無くなっても、首だけになっても取り戻してやる!絶対に!」
そうだ、アオはどんなに苦しくても辛くても自分の夢の為に諦めなかった。
1番隣にいて見てきた俺が忘れてはいけないことだった。
アオは俺が想像する以上に、どんなにも屈しない強い心を持ってる。
「そうだな…お前は諦めてないのに俺が諦めたらいかんよな」
アオは諦めてない…アオを護らないといけない俺が諦めたらいけない!
「アオ!俺も力ある限り練り続ける!だからお前も全力で練ろ!」
「おう!!」
俺とアオは互いの意識を同調し、魔力をねり始める。
最初は練れなかった魔力が、少しずつ水が湧き上がるかのように溜まりに溜まっていく。
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
魔力が溢れ出て、俺たちを包んでいく。
「なっ…」
師匠がまさかの事に驚いている。
「セラ…」
「アオ…」
「これで魔力は十分に溜まった、私は闘える」
「俺もだ…行くぞ!」
「おう!!」
俺達は再び師匠にたたみかけた、今度は突かれないように素早くかわし、護りながら攻撃をしていく。
「っ…!?しかし、なぜ…お前から俺の魔力を感じる………まさか」
「…そのまさかですよ師匠…あなたは予知は出来るが俺だってところまでは予知が出来なかったみたいだ」
「………」
「運命なのか分からないですが、俺の番は師匠…アナタが1番愛したメス…ホタル。ホタルの娘。あなたの愛娘、深海アオだ!!」
「!?!?!?」
「俺も真実を知った時は驚かされました…そして今も俺はあなたに驚いてる…なんせ、師匠の瞳…師匠の番でアオの母親、ホタルの魂が宿っている。本来、番が亡くなれば契約は無くなる…。だけど、あなたはアオの母親の事を愛してるが故に、瞳を代価に魂の契りをする事によって、亡き者と永遠に共になれ……っ!?」
ドゴォォォォォン!!
「つ!?」
一瞬の隙に師匠が俺の頭を掴み一気に地面に叩き付けられた。
見えなかった…。
そして、頭部から出血してるのが分かる。
「まさかお前がアオと番になるとは思わなかった…だが、お前のせいで俺の計画全てが無くなる事になる」
「っつー…やはりそうだったんですね」
「これ以上知ったような口を聞くならば、そのままお前の頭蓋骨ごと砕いてやる」
「くっ…はは!」
「何がおかしい?」
「師匠、あなたはやはりどんなに冷静さを保っていても、自分の娘がこうして自分の相手で戦ってる事に、少し抵抗があるみたいだ…。冷酷で残忍な戦士としてのあなたならその攻撃で俺を直ぐに殺せる筈だ…。なのにしなかった!やはりあなたの心にはまだ迷いがある!まぁ、そのおかげで、これでようやく師匠を捕らえることができたが…行くぞアオ!!」
「うん!」
「!?!?」
師匠の腕を掴み、アオの精神だけ師匠の中に入れた。
今の俺達は師匠倒す事は出来ない…ならば直接問いかけて、悪から善に変えさせる。
神…ポセイドン様なら師匠の行いも心内も分かってくれるはずだ。
「ん…ここは?」
「俺の精神の中だ…あの馬鹿弟子…まさかアレを使うとはな…」
「…あっ…あ…」
「アオ…。今の姿じゃ、分かりづらいか?なら昔の姿に…」
「父さん!!」
ギュッ
私は目の前にいる自分の父親に抱き着いた。
記憶が曖昧な筈なのに、父さんの懐かしい姿が私の記憶を蘇らせた。
「あぁ…父さん…」
「…アオ」
父さんは大きな手で私の頭を優しく撫でる。
覚えてるこの感じ、小さい頃に頭をよく撫でられてた。
嬉しさのあまりに涙が止まらず流れ出る。
「うわぁあ……父さん!会いたかったよぉ!」
「すまなかった…お前を1人にしてしまって」
「ひっく…いいんだぁ、だって父さん…父さんがこうして生きてるし…ひっく…うっ…それに、父さんはオーシャンを…世界を守る為に1人で戦ってるのも」
「…全部知ったのか?」
「ううん、全部じゃない…セラもこの1年一緒に調べたの…全部じゃないけど…私思い出したんだ…父さんはあの時…父さんの力を受け継いだ私を狙ってた天海人に連れて行かれそうになった時、私を助ける為に罪人として深海に堕ちて任務を続けていたんでしょ?」
「………」
「そして、私に会わない状態で母さんとも会っていた…母さんは小さかった私に嘘をついてまで、夜な夜な海に行ってたの知っているから…」
「…やはり、ホタルの奴は本当に嘘が苦手だな…アオにもこうもバレてるとは…。…お前が言った通りだ…俺は禁忌を犯しお前を授かった…だが、お前の力は強すぎた…強い力は深海…。いや魔海軍の標的になった。だから、お前を探し隔離し均衡を保つために天海軍がきた。ポセイドン様にはもうお前が産まれた時から、存在を知られていた。だから、あの時のような事が起きてしまった…」
「そして、力を持つ為に番だった母さん…母さんの魂と契約をし母さんと一緒に…」
父さんは私の目線に合わせるようにしゃがみ、優しく両頬に触れた。
「母さんにそっくりだ…瞳の色は俺似になってしまったが…」
「父さん…」
私は父さんの手を優しく握った。
父さんの手は戦士とは思えなくて、父親らしい温もりだ。
「私もセラも一緒に戦うから!だから、もう1人で戦わなくていい!!」
「…………」
「父さんからしてみたら、私はまだまだ子どもだけど…私からしたら父さんが今もこうして苦しそうに戦うのは見たくない…母さんを亡くした悲しみは私にもある…母さんや父さんがいなくなってから私も虐めてきたヤツらと戦ってきた…父さんみたいに戦ってきた…同じ悲しみがあるなら、同じ幸せな道も行けると思う……だって…」
『親子だから』
アオのその優しい言葉が、一瞬リヴィアタンにとって最愛の人の姿と重なった。
「っ!?……ホタル……」
「父さん??」
「……そっか…そうだよなホタル…俺達の娘は小さいままじゃない…成長し大人なってる…アオ…セラとならもしかしたら本当に一緒に世界を救えるかもしれない…」
父さんは優しく手を握った。
「アオ、父さんは直ぐとはお前達のところにはいけない…やるべき事があるからな…それが終わり次第お前達の所にいく…約束だ」
「父さん…」
「このバトルは俺が悪から善に変わったと、トリトーンに言って俺が棄権する」
「!!!!??」
「だから、少しだけ待っててくれ」
「分かった!父さんまってる」
師匠は俺の腕から離れた瞬間、アオの意識が戻ったのを感じた。
「アオ、なんとかやれたのか?」
「おい…バトルマスター」
「あ、なんだ?」
「俺はこの闘いを棄権し、悪から善に変わった事を宣言する」
「なっ!?なんという事だ!あの最強戦士が棄権!?!?せっかくの盛り上がりの途中で棄権!一体誰が…」
「もういいだろうトリトーン」
「と、父ちゃん!?」
トリトーンの背後から海水と一緒に海神のポセイドンが現れた。
「1連のやり取り見ていたぞリヴィアタン」
「ポセイドン様…」
「お主は天海をあの惨劇から救った事も、今こうして魔界軍から天海を護ってるのも分かる。じゃが、禁忌を犯したことには変わりはない。しかし、父親と娘をこれ以上離れ離れにする権利は私達にはない…。それで」
「…………」
「……条件付きでお前を天海に戻す。1年はイッカクを監視役としてお前のそばに置く、分かったな?」
「あぁ…」
『なんという事だぁぁ!悪から善に変わったぁ!!!稀に見られない決着の付け方だ!!』
「出来の悪い弟子と番に色々言われたからな……感謝しますポセイドン様」
「いいんだ、ワシにも子がいるからな…親子は誰にも引き裂くことは出来ない」
師匠は少し呆れたような表情しながらも、俺の方を見た。
「セラ、アオのことを頼む…かなり魔力を使ってるから、多分合体を解いたらアオの奴気絶してるかもしれないからな…。あいつが目覚める頃に戻れるようにはする」
「分かりました師匠…俺達の声に応えていただきあり…」
「あと、セラ」
「なんですか??」
師匠の表情が一気に黒くなった…まずいあの表情は…非常にまずい。
あの表情は、俺が弟子の時に散々見てきた、師匠の殺意ありの怒り!
「お前、アオの首筋に魔法呪を残したな?俺が分からなかったと思ったか?」
師匠が物凄い殺気を飛ばしながら、少しづつ迫り来る。
「!?!?!?」
「しかもなんだ、アオの左手の薬指の指輪」
「…………」
「おい、何故無言で俺をみない?」
「いや、その…それは」
「まぁ、いい後でその話を…師匠…いや、父親として聞くとしよう」
目が笑ってない……。
師匠には俺とアオがどこまでしてきたのか全て見抜かれていた。
父親として当然な反応だろう……。
多分この後俺は師匠に110年振りに思いっきりしばかれるのだと悟った。