海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します
現代

「…見たことない…だけど、耳?鰭?尾鰭?尾鰭みたいなものは…シーラカンスに似てるし…しかし、人間の姿だし…」

---誰だ?メスで子どものような好奇心旺盛な声がやけに俺の耳に入る。
確か…俺は…。

重たい瞼をゆっくり開けると、ぼやけながらも少しづつ目の前に映るのは。黒く短髪で、綺麗な青い瞳をしたメスが映っていた。

「やっと目が覚めた!」
「………」
「だ、大丈夫?」

メスは少し心配そうな表情でこちらを見つめる。

「……った」
「へ?」
「……腹減った」

メスとの少しの間を遮るかのように、空腹の音が鳴り響いた。
そうだった、オーシャンから出る時に、昼飯忘れたせいで陸に着く頃には、空腹で倒れた。
しかし、それなりの空腹なのは、腹の音を聞いたらわかる。

「……」
「お腹減っているみたいだね。しかし、魚は今はきれてるし、こんな時間だから簡単のしか作れないけど、私が美味いもん作ってやるから、作り終えるまで少し休んで」

メスは自分に任せろと言わんばかりにその場を去っていった。
俺は寝床から起き上がり、辺りを見渡す。

「……オーシャンではないな。俺は陸にいるのか?」

辺りは本がやけに積んでいたり、何かしらの地図や様々な魚の絵等壁に貼られており、汚いでもなく綺麗でもないなんとも言えない部屋だ。
メスの様子からして、どうやらメスはこの住処で一人暮らしのようだ。

「しかし、辺り一面に魚に関する事ばかりだな」
 
しばらく部屋で待ってると、さっきのメスが戻ってきた。

「なに?私の部屋を見渡して、そんなに珍しい?」
「……いや」
「ほら、ごはんできたから。立てる?」

メスに言われて脚を寝床から出す。
オーシャンとは違い、陸は浮かない…。
ゆっくりと足を床に付けて、寝床から立ち上がる。

「…でかいな、浜辺で倒れていたアンタを助けた時もそうだけど…アンタ身長いくつ?」
「陸の人間で言えば……190cmだ」
「ほへー2m近くある人間を見たのは初めてだ、それにこんな筋肉マッチョでイケてるおじさんを、助けるなんて中々ないしな」
「イケてるおじさん?俺はおじさんと言う歳ではない」
「そうなの!?」

メスは俺を不思議そうな顔で見上げ、まじまじと俺を見つめる。
その姿がまるで子どものようだ。
俺とメスの身長差は大体40cmはあるかないかくらいで、噂には聞いていたが、人間のメスがこんなにも小さいとは…。

「あ、チャーハンが冷める!ほら、こっち」

メスに案内されてリビングらしき所にいく。
机の上にはご飯らしきものが置いてあった。

「余りの白飯で作ったやつだけど、食べないよりかはマシかな?」
「………」

メスから匙を渡され受け取る。
しかしなんだこのチャーハンというのは…やけに美味い匂いがする。

「大丈夫だよ、毒とか入れてないから!ほら食べなって」

メスに促され、匙でチャーハンをひとすくいすると、匙にのったチャーハンは美味そうに湯気がたっており、ゆっくりとチャーハンを口に運んだ。

「ん!?」
「お?美味い?」

なんだこの美味さは!初めて食べる味だ!陸の人間はこんなものを食べていたのか!
口に広がるパラパラしながらも美味さが広がり、何かしらのスパイスのせいか、さらに美味を引き立たせて、オレはチャーハンの美味さと匂いで匙を動かす。
腹が空いてたのもあるが、海で食べていた料理よりもはるかに美味い。

「メスよ、このチャーハンというのは美味いな」
「美味くてよかった!てか、メスって…メス呼びはやめて、私は深海アオ。アオって呼んで」

アオは幼い顔ながらも優しく微笑みながら自己紹介をする。

「オレはセラ・クロッソ・シーラカンス」
「シーラカンス!?やっぱりシーラカンスだったんだ!!」
「なんだ?知っているのか?」
「知ってるのもなにも、私は海洋生物学者だから!その中でもシーラカンスは私が研究してる魚なんだよ!」
「魚って…お、おい!」

アオは自室に急いで行き、両手には本等や様々な紙を担いで自室から戻ってきた。

「人間の姿をしたシーラカンスなんて初めてだ!!名前長いからセラって呼ぶ!いやぁ、新たな発見に私は胸が踊るよ!!てか、なんで人間の姿なの?教えて!!」

アオは次々へと本やら紙を広げていく。
そこに書かれていたのは、俺の本来の姿が詳しく書かれていた。
学者というのは伊達ではないようだ。
今気づけば、アオの自室やリビングにはシーラカンスの他にも様々な海の生物の資料があった。

「これ、全部お前が書いたのか?」
「本以外は私が独自で調べてまとめた!ねぇねぇ!もっとセラの事聞かせて!」
「……まぁ、生き倒れたところを助けた上にチャーハンをご馳走になったからな、話せる範囲でなら話そう」

助けてくれたのとチャーハンのお礼に、俺がなぜ人間の姿なのかを教えた。

「まぁ、お前たち陸の人間からしたら俺達は魚に部類されてもおかしくは無い。だが、俺達はお前達と同じ人間で、耳鰭や尾鰭は先祖の特徴…。例えば俺はシーラカンスの子孫にあたる…。遥昔、海の生き物は厳しい環境を生き抜くために、進化の過程で人間と魚が互いの知識、身体を混ぜて産まれたのが天海人だ」
「ちょっとまって、それじゃあ…人間の姿をしてない生き物は?」
「それは、神の加護が産まれながらない生き物だ…海で産まれた生き物全てが天海人になれるわけではなく、神の加護…つまり海神のポセイドンの選別に選ばれた生き物のみなれる」
「何故そんなことを……」
「お前ら陸の人間が一番分かるだろ?」
「!?!?」
「そうだ、空や陸は海とは別に見えてそうじゃない…海の魚を人間や他の生き物も生きる為に、捕り食べる。海の生き物全てを天海人にしたら、陸や空の生き物が生きれなくなる…。神の選別とは空や陸と海の均衡を保つ為の手段なんだ…。まぁ、主には陸と海だがな。そして、選ばれた生き物は長く代々と受け継がれ、1つの一族になる」
「…そうなんだ…てか、なんでセラは陸にいるの?」
「それは……っ!?」

アオに陸に居る理由を言おうとしたその時だった。
< 3 / 45 >

この作品をシェア

pagetop