海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します

シャチ。
鯨偶蹄目のマイルカ科に分類され、哺乳類のなかでは人間に次いで広範囲に生息し、日本を含む世界中の海に分布している生き物。
学名のOrcinus orca(オルキヌスオルカ)は、ラテン語で『冥界からの魔物』という意味がある。
英語はKiller Whale(キラーホエール)クジラ殺し』といい、自分より遥かに大きい獲物を狩ることができる能力から名付けられた。
ちなみに和名のシャチは、魚の胴に虎の頭を持つ空想上の生物、鯱が由来。
シャチは海の王者と言われるほど知能は高く、人懐っこく人間には人気。
更に群れ成して暮らしており、群れのリーダーは主にメス。
そんなメスがリーダーになる世界で、あるオスシャチがリーダーになった。

リーダーの名前はオルカ・シェーンチ。

彼の母親はシャチの世界では頂点に立つほどの実力者だった。
しかし、なぜオスであるオルカが群れの…いや、一族の長になれたのか、それは100年以上前になる。

「オルカ!ラキエル!」
「母上!兄上、母上が帰ってきた!」

弟ラキエルは国の入口で、母親のシルキーの姿を見つけ、嬉しそうに兄オルカに報告した。
 
「本当か!?」
「しかも、大きな鯨肉担いでる!」
「マジか!じゃあ行こう!」
「ちょ、まってよ兄上!」

オルカとラキエルは、待ちに待った母親の元へ急いで向かった。

「母上!」
「オルカ!」

 オルカとラキエルは嬉しさから母親に抱きついた。
 幼い2人にとっては、唯一の母親の帰還は嬉しい事であり、母親も愛しい息子に会える事は何よりの幸せ。

「母上、よくご無事で!」
「母上、今回は盗賊?罪人?何を倒したんだ?」
「はいはい、ちゃんと屋敷に着いたら話すから、ほら貴方達も荷物運ぶの手伝って」
「はい!」

オルカの故郷はオーシャンでは珍しく、一族同士で出来た小さな国だった。

「今日は皆で鯨の肉で宴だ!」
「兄上!狩ったのは母上達だから、母上の許しがなければ宴は…」
「いいわ、今日は久しぶりに戻ったもの。皆で宴をしましょう」
「やったあ!鯨の肉!鯨の肉!余った肉は皆に分けよ!!」
 
小さな国だからこそ、人々は位など関係なく助け合いながら暮らしていた。
シルキーを含め、戦士になった一族は定期的に隣国や隣村に出向き、村や国に害する者や害獣などを狩って、その賞金で国を支えていた。
そしてシャチ族は、戦いに特化した一族であり、10歳になると戦士になるまで国一丸となって育てられる。
オルカもラキエルも国の大人達によって鍛え上げられてきた。

しかし、そんな国の体制が気に食わない一族がいた。
シルキーからしたら、従兄弟になるトレイが率いるオフショア一族。
トレイは、昔ながらの弱肉強食…強気者が頂点に立ち、弱き者は見捨てるという考えがあり、族長会議には必ずしもシルキーとぶつかっては敗れていた。
しかし、従兄弟の傲慢さは止まらず、仕舞いにはシルキーに奇襲を仕掛け、同族の争いに発展させた。

「皆、私が時間を稼ぐ!!オルカとラキエル…生きている仲間を連れて安息地まで逃げろ!あそこまでさえ逃げたら、奴らは追って来られない!」
「分かりましたシルキー様」

シルキーの部下は幼いオルカとラキエルを素早く抱えた。
  
「母上!!母上!!離せ!!離せよ!」
「母上!」
「ダメです、オルカ様!ラキエル様!」
「ダメなんかじゃない!母上が、アイツらに殺される!俺たちが行かなきゃ…」
「オルカ!!」
「!?」
「貴方達は私達の未来、絶対に死んではいけない!貴方達さえ生きれば一族は助かり、国はまた再建できる。貴方達2人は…生まれながら、お父さん譲りの心優しい子…だから絶対に弱き者に歯を向けてはいけない!…オルカ、本当の強き者は弱き者を守り導く者こそ、真の強き者!貴方達は絶対に強さを間違ってはいけない!!さぁ!行って!早く!」
「母上!!」

オルカとラキエルは仲間に連れられ、燃え落ち消えていく国を後にした。
 
「オルカ、ラキエル…一緒に居られなくてごめんなさい…私は貴方達をこの世界の誰よりも愛している」
 
そして、幼きオルカは弟と仲間の支えがあり、一族のリーダーになった。
そんなオルカは、神の試練を合格し、一族のリーダー兼7天の忍辱の戦士としてオーシャンバトルに参加するのであった。
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