海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します

「ここが、私の部屋…元だけど…ほら入って」
「……」

部屋に入りゆっくり荷物を置く。
部屋の様子はシンプルで、窓から海が見える。

「海が見える」
「見えるよ、昔は今より建物が少なかったから結構見えてたけど…」

少し残念そうに苦笑するアオ。
確かに建物がなければかなり良い風景だったかもしれない。
そして、窓を開けると海風が優しく入ってくる。

「やっぱりここからの風は気持ちいい…。ほら、おばさん待っているから下にいこ」

アオに手を引かれ部屋を後にした。

リビングに戻ると、ヒフミがお茶の用意をしており、オレとアオはヒフミに言われるがままに席につき、ヒフミと他愛もない会話で盛り上がる。

「いやぁ、しかしまさかアオが恋人をつくるなんて…もしかして…2人は婚約はしたの?」
「ごふぅっ!!?こ、ここここ婚約!?」
「はい、もちろん婚約しました」
「んごぉ!?せ、セラ!?」
「もぅ!若いっていいわねー!!!アオ、本当に良い人見つけたわねー!アナタのお父さんもお母さんも喜んでるはずよ」
「……あははどうだろう」

アオはヒフミの言葉に少しだけ詰まった。

「そう言えば、アオのご両親は?」
「…………ご、ごめん!私ちょっとトイレ行ってくる」
「…………」

アオは誤魔化すようにして、慌ててトイレに行った。
確かに、契った時アオの記憶を見たが、アオの両親に関しての記憶は全くもって見られなかった。
本来なら記憶全て見られるはずなのに、見られないのは不思議だった。
しかし、両親についてはアオにとっては何かタブーだったのかもしれない。
だとすれば、意識的にシャットアウトしてるのであろう。

「ごめんなさいね、あの子どうやらまだ両親の事あなたに話してなかったのね」
「いえ、謝るほどでは…誰しも話したくない事もありますし」
「そうね、でもあの子はあの性格だから多分死ぬまで両親の事は話さないかもしれないわ」
「もし、差し支えがなければ聞いてもいいですか?」
「いいわ、あの子の代わりになっちゃうけど」

ヒフミはゆっくりとアオの両親について話してくれた。

ヒフミはアオの母親の妹で、姉妹一緒にアオのように海洋生物の学者をしていた。
そんなある日だった、アオの母親である深海ホタルが1人の男…アオの父親リヴァと言うオスと恋人になり結婚した。
2人は凄く仲がよく、ヒフミも結婚生活の幸せを願うくらいの良さだったらしい。
そして、25年前にアオが産まれた…。
3人は幸せに暮らしていたアオが4歳になるまでは。
アオの家族は海が好きでよく泳いでいたらしい。
しかし、そんなある日…アオが波に攫われてアオを助ける為にリヴァが犠牲になった。

「姉さん家族が泳いでいた場所は、本来波がさらうような深い場所じゃなかった…。場所も場所だから義兄さんの死体が見つかってるはずなのに見つからなかった。多分姉さんが真実を知っていたかもしれない…その姉さんも、アオが10歳の時にガンで亡くなったから、今じゃ闇の中」
「…………」
「まだ子どもだったアオにはかなり精神的にきてたのはひと目でわかった。親代わりとして育てていた私からしても耐えきれないと思ったもの…今のように明るいアオになるまで数年はかかってる」

ヒフミがそこまで言うなら、アオはかなりキツかったんだろう…。
大切な両親を失う悲しみや苦しみは俺も痛い程分かる…俺もアオにはまだ言えない過去があるから。

「あ、そうだわ…アナタにこれと…これをアオに渡して欲しい」

ヒフミから小さな小箱と少し大きめな包みを渡された。

「義兄さんから、亡くなる前に渡されたの。俺みたいに高身長で瞳が黄緑っぽい男がアオの恋人って言ってきたら、アオとそいつに渡しといてくれと」
「…中身確認しても?」
「いいわ」

ヒフミの言葉に疑問を持ちながらゆっくりと箱を開ける。

「!?!?!?」

箱に入っていたのは陸にはあってはならない物だった。
それは、古代生き物のカメロケラスの殻とメガロドンの歯で作られた短刀だ。
短刀の柄と鍔はカメロケラスの殻で刃の部分はメガロドンの歯だ。
魔海人でも荒々しく最強とも言われた2匹を倒し、この精密な魔力で短刀を作れるのは1人しかいなく、さらに俺が1番知っている人物。
名前を変えていたから気づかなかったが……

リヴィアタン・クレイ

天海古代哺乳類族の中で最強と言われた男…元7天の1人であり…俺の師匠だった。
25年前に師匠が7天から除外され、俺が入った…。
その時は除外された理由は聞かされてはいなかったが…まさか…禁忌を犯してたのか…。

「大丈夫?」
「あ、いえ大丈夫です。これ、アオに渡しにいってもいいですか?」
「いいわよ、それに朝からバタバタしてたでしょ?少し休むといいわ…それにあの子、部屋にいると思うし」
「ありがとうございます」

俺は包みを抱え、アオの部屋にいくと部屋にはヒフミが言った通りアオが居た。
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