極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「そのあと、俺が言った言葉を覚えてるか?」
「なんだっけ?」 
 奏斗は目だけ功成に向けた。
「『運命の恋ってのは一人じゃ落ちることはできない』って言ったんだ」
 功成の言葉を聞いて、奏斗は口元にふっと苦笑を浮かべた。
「おまえもたいがいクサいセリフを言ってるぞ」
「そうだな」
 功成は奏斗がブランデーを飲むのを見ながら、なにげない調子で問う。
「そういえば、彼女とは姉さんの病院で偶然再会したって言ってたよな。すごいよな、同じ日本人とはいえ、この大阪で、しかもピンポイントで再会するなんて。それこそ本当に運命じゃないか」
「俺もそう思ったんだが」
「もしかして住んでるところも近いのか?」
「そうだな。車なら三十分くらいだろう」
 奏斗のグラスが空になったので、功成はまたバーテンダーにお代わりの合図をした。
「それなら、これまでの人生ですれ違ったことくらいありそうだよな」
 功成は言って、またお代わりを飲むよう奏斗に勧めた。
 奏斗はグラスに口をつけて、呟くように言う。
「すれ違っていたら印象に残っていたかもしれない。とてもきれいな髪をしてるんだ。雰囲気は柔らかくてかわいいんだが」
 その二葉のやつれた様子を思い出して、奏斗は胸を痛めた。
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