極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 そんなふうに未練の残る言葉をかけられる価値は自分にはない。
「目が覚めたのなら帰れますよね。明日も仕事に行くんでしょう? 奏斗さんは自制心が強いから、明日になったらどれだけ二日酔いでしんどくても、平然と仕事をするって、佐久間さんが言ってましたから」
「自制心か。もうとっくに崩壊している」
 奏斗はそう言って立ち上がるなり、二葉の手首を掴んで彼の方にぐいっと引き寄せた。
「あっ」
 よろけた二葉を奏斗はギュッと抱きしめる。
「ちょっと、奏斗さん」
 二葉は体を離そうと、彼の胸に両手を押し当てた。けれど、力強い腕に囚われて身動きできない。
「二葉」
「奏斗さん、離してください!」
「嫌だ」
 二葉を抱きしめる奏斗の腕に力がこもった。
「奏斗さん!」
 二葉は奏斗の上着の背中をギュッと掴んだ。引きはがしたいけれど、その温もりを愛おしいと思う自分がいる。
(でも、ダメ。私は奏斗さんにふさわしくない)
 何度も自分を戒めた言葉。それをもう一度言い聞かせたとき、奏斗の両手が二葉の頬を包み込んだ。
 あっと思ったときには、唇に彼の唇が重なっていた。
「んっ」
 唇を貪られ、舌を絡め取られる。
 激しく奪うようなキス。自分を求めてくれているのだと痛いほどわかる口づけに、目に涙が滲む。
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