極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
(ああ、やっぱり……)
 二葉は申し訳ないのと悲しいのとで表情を歪めた。そんな二葉を見て、奏斗は大丈夫、というように頷いた。
 彼はときおり「なるほど」とか「いいえ」とか言いながら、しばらく祖父の話に耳を傾けていたが、やがて静かに言葉を発する。
「おじいさまのご心配もごもっともです。ですが、おじいさまがお望みなのは、二葉さんの幸せではないのですか? 息子さんを失われた悲しみを二葉さんにぶつけることが、二葉さんの幸せになるとは思えません」
 奏斗の強い口調に祖父は返す言葉を失ったのか、スマホから祖父の声は漏れてこなかった。
 奏斗は少しして口を開く。
「私は二葉さんを必ず幸せにします。二葉さんの幸せが私の幸せですから」
 また祖父がなにか話す声が聞こえたが、先程までの激しい口調ではなかった。
 奏斗は黙って祖父の話を聞いている。二葉が見ていたら、奏斗は「わかりました」と言って二葉にスマホを差し出した。
「二葉、おじいさまが代わってと」
「えっ」
 二葉は不安な面持ちで奏斗を見たが、奏斗は穏やかな表情で頷いた。
 二葉はスマホを受け取って耳に当てる。
「二葉です」
『……二葉。今まで……すまなかった』
 祖父が絞り出したような声で言った。二葉は祖父が謝ったことに驚いて瞬きをした。
< 191 / 204 >

この作品をシェア

pagetop