極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 奏斗は愛する妻の大きなお腹に視線を向けた。エコー写真で男の子だとわかり、いくつか名前の候補を考えたのだが、どれにするかは顔を見てから決めようということになっている。けれど、どの名前にも〝ゆう〟という音が入っているので、お腹に呼びかけるときは〝ゆうちゃん〟と呼んでいる。
「ゆうちゃん、いつ出てくるんだろうなぁ」
 奏斗が言うと、二葉は左手でお腹をさすった。
「ほんとにねぇ。パパもママもずっと待ってるのに」
「寒がりなのかな」
 奏斗の言葉に二葉はクスッと笑った。
「外が寒いから?」
「ああ。俺に似たのかもしれない。俺も寒がりだから」
「それは知らなかったなぁ」
「二葉に温めてもらおう」
 奏斗は二葉の右手を握った。二葉の方が手が冷たかったが、素知らぬ顔で自分のコートのポケットに入れる。
「奏斗さんの方が手があったかいじゃない」
 だが、二葉に指摘されたので、とぼけることにする。
「そうかな」
「そうだよ。寒がりなのに私の冷たい手を握って大丈夫なの?」
「二葉の手を握ったら心が温かくなるから問題ない」
「奏斗さんってば」
 そんな他愛ないことを話しながら、公園をもう一周して出口に向かった。歩道に出たとき、二葉が小さく「あっ」と声を上げて足を止めた。
< 196 / 204 >

この作品をシェア

pagetop