極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「どうした?」
「なんかお腹がギュウッてなる……陣痛、かも」
「それなら、今すぐ車を取ってくる! 二葉はここで待ってろ」
 奏斗は慌てて走り出そうとしたが、二葉は手を離さなかった。
「ダメダメ、初産の場合は出産まで時間がかかるから、陣痛が十分間隔になってから病院に連絡してくださいって言われてるの」
「えっ、そうなのか?」
「うん。お義姉(ねえ)さんだって、最初の陣痛が来てから生まれるまでに二日かかってたでしょ?」
 奏斗は九月に出産した姉の奈美のことを思い出しながら、「そうだったかな」と呟いた。
 奏斗はそんな詳しい話を姉から聞いたことはなかったが、二葉は姉とメッセージのやりとりをしたり、SNSをフォローし合ったりと仲良くしている。出産の先輩としていろいろ話も聞いているようだ。
「ちょっと座るね」
 二葉はお腹を押さえて顔をしかめながら、近くのベンチに腰を下ろした。
「大丈夫か?」
 奏斗は隣に座って二葉の腰をさする。
 二葉はしばらく背中を丸めて「ふぅ、ふぅ」と呼吸をしていたが、やがて背筋をスッと伸ばした。
「治まった!」
 表情も平然としていて、さっきまで痛がっていたのが嘘のようだ。
「えっ、本当に?」
「うん。次の陣痛が来るまでの時間を計っておかなくちゃ」
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