極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「私も寝るから奏斗さんも寝て」
「努力する」
 奏斗の言葉を聞いて、二葉は彼の腕に頭をのせて体を丸めた。
「奏斗さんが寝てくれないと私も寝られな~い」
 二葉はいたずらっぽい口調で言った。彼女の方がつらいはずなのに、奏斗を気遣ってわざとそんなふうに言うのだ。
 奏斗は愛しさを感じながら、二葉の髪をそっと撫でた。
「わかった。じゃあ、俺も寝るから」
「約束ね」
 腕に閉じ込めた二葉の温もりに安心感を覚える。やがてウトウトしかけたとき、二葉が「いたた……」とうめき始めた。
 奏斗がスマホを見たら、さっきから十分しか経っていない。
「二葉!」
「うう……奏斗、さん」
「病院に行こう」
「うん……。先に電話してから、ね」
 二葉はしばらく痛みに耐えていたが、やがて陣痛が落ち着いてからスマホで病院に電話をかけた。二葉が話している間に、奏斗は用意していたボストンバッグを玄関に運ぶ。戻ってきたら二葉がベッドの縁に腰かけていた。
「行けるか?」
「うん」
 奏斗は二葉に手を貸して、ベッドから下りた二葉を右手で支えた。
 そのまま部屋を出て一階に下り、駐車場で車に乗る。公道に出たところで、また陣痛が来たらしく、二葉は助手席で体をよじるようにして抑えたうめき声を上げる。
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