極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 さっきまで二葉のお腹の中にいた存在が、今、目の前で産声を上げている。
 感動で胸がいっぱいで、言葉が出てこない。
 奏斗は二葉に視線を戻した。彼女はひどく疲れているはずなのに、頬を紅潮させて目を輝かせている。
「二葉、お疲れさま」
 奏斗は汗で濡れた二葉の額をタオルでそっと拭った。二葉は目を細めて彼を見る。
「どうしよう。すごく嬉しくてドキドキしちゃう」
「俺もすごく嬉しいよ。でも、二葉の体調が心配だ」
「嬉しすぎて疲れとかぜんぜん感じないの。でも、あとでドッと疲れが出ちゃうかも」
 二葉が微笑んだとき、助産師が出生直後の処置を終えた赤ちゃんを抱いて、二葉に声をかけた。
「さあ、ママ、赤ちゃんを抱っこしましょうね」
 助産師は二葉の胸に赤ちゃんをうつ伏せにして抱っこさせた。いわゆるカンガルーケアというものだ。
「ゆうちゃん、やっと会えたね……。いつ生まれてくるのかなってずっと待ってたんだよ」
 二葉は愛おしそうに赤ちゃんの背中にそっと触れた。
「のんびり屋さんなのかもしれないな」
 奏斗が呟くと、二葉は目だけ動かして奏斗を見た。
「私もそう思った。だったら、名前は――」
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