極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 フローラの沈痛な面持ちを見て、二葉は笑みを作った。
『次に予約していたところに今日から泊まれないか訊いてみます。きっと大丈夫ですから、私のことはもう気にしないでくださいね』
 フローラが腕を広げ、二葉は彼女ともう一度ハグをした。
『お元気で、フローラ』
『あなたもね、二葉。ロンドンではこんなことになってしまったけれど、イギリスの旅を楽しんでね』
『はい。ありがとうございました』
 フローラは二葉の両頬に挨拶のキスをした。
『それじゃ、さようなら』
 二葉はもう一度礼を言って部屋を出た。背後でパタンとドアが閉まり、名残惜しい気持ちを振り切るように、重たいスーツケースの持ち手を両手で握って階段を下りる。一階に着いてスーツケースを地面に下ろし、大きく息を吐き出した。
 挫けそうになる気持ちを、軽く両頬を叩いて立て直す。
「……しっかりしなくちゃ」
 ひとまず最寄りの地下鉄の駅、ハイ・ストリート・ケンジントン駅に向かう。高級店が集まっている通りを抜けて歩道を歩いて行くと、日本でもお馴染みのファストフード店の向かい側に、趣のある建物が見えてきた。赤い丸に、青地にUNDERGROUNDと白抜きされた横棒が目印のマークが出ていて、そこが地下鉄の駅なのだとわかる。
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