極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
(先に次の宿泊先に連絡しなくちゃ)
二葉は地下鉄の入り口の手前で足を止めて、歩行者の邪魔にならないよう壁際に寄った。バックパックからスマホを出して、明後日チェックインする予定のバースのB&B――朝食つきの民宿――に電話をかける。
『はい、カールトン・ハウスです』
女性の声が応答した。きっとオーナーだろう。
『あの、明後日から一週間の予定で宿泊を予約しているフタバ・クリモトと言います。実は今の滞在先が火事の被害に遭いまして、予定より早く出なければいけなくなってしまいました。そちらに今日の夜から泊まらせてもらうことはできないでしょうか?』
スマホのスピーカーから、淡々とした女性の声が返ってくる。
『できません。火事はお気の毒です。けれど、あなたが予約しているのは明後日からです。バースは観光地なので、急にそんなことを言われても困ります』
『あ……そうですよね。すみません』
弱っているところに事務的な口調で返され、二葉は肩を落とした。
電話を切って、インターネットで宿泊先を探すことにする。ホテル予約サイトを表示させたとき、すぐそばに置いていたスーツケースのキャリーバーに誰かが手をかけた。ハッとして目を向けたら、カールした黒髪に灰色の目をした二十代半ばくらい男性が、二葉を見下ろしていた。
二葉は地下鉄の入り口の手前で足を止めて、歩行者の邪魔にならないよう壁際に寄った。バックパックからスマホを出して、明後日チェックインする予定のバースのB&B――朝食つきの民宿――に電話をかける。
『はい、カールトン・ハウスです』
女性の声が応答した。きっとオーナーだろう。
『あの、明後日から一週間の予定で宿泊を予約しているフタバ・クリモトと言います。実は今の滞在先が火事の被害に遭いまして、予定より早く出なければいけなくなってしまいました。そちらに今日の夜から泊まらせてもらうことはできないでしょうか?』
スマホのスピーカーから、淡々とした女性の声が返ってくる。
『できません。火事はお気の毒です。けれど、あなたが予約しているのは明後日からです。バースは観光地なので、急にそんなことを言われても困ります』
『あ……そうですよね。すみません』
弱っているところに事務的な口調で返され、二葉は肩を落とした。
電話を切って、インターネットで宿泊先を探すことにする。ホテル予約サイトを表示させたとき、すぐそばに置いていたスーツケースのキャリーバーに誰かが手をかけた。ハッとして目を向けたら、カールした黒髪に灰色の目をした二十代半ばくらい男性が、二葉を見下ろしていた。