極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「おいしい。中身がキュウリだけじゃなくてよかった」
 空腹に染み渡るようで、二葉はため息混じりに呟いた。奏斗は向かい側の席で紅茶を飲んでいたが、二葉の様子を見て目元を緩める。
「昔はキュウリは高級食材だったから、キュウリのサンドイッチが貴族のステイタスだったそうですね」
「そうみたいですね。英国の気候では栽培しにくかったから、温室でキュウリを栽培できる財力があるって示せたとか」
 二葉が言うと、奏斗は感心した声を出す。
「へぇ、そこまでは知らなかったな。二葉さんは博識ですね」
 奏斗に褒められて、二葉は照れながらも顔をしかめた。
「飛行機の中で読んだガイドブックに書かれてたんです」
「そうだったんですか。俺は読んでないので初耳です。食材一つにも歴史があっておもしろいですね」
「はい。あと、イギリス料理ってマズイってイメージがありますけど、本当はそうじゃない、みたいなことも書かれてましたよ」
「どういうことですか?」
 奏斗は興味を引かれたように少し首を傾げて二葉を見た。二葉はサンドイッチを持ったまま説明を始める。
「イギリスの伝統的な料理は味が薄いって言われますけど、それは素材の味を大切にしているからなんだそうです。味付けはテーブルに置いてある塩こしょうなどの調味料を使って、お客さんが自分でする。そうすると、誰もが自分の好みの味で食べられるっていう考え方なんだとか」
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